「母国で障害への理解を広めたい」と願うアフリカの大会最年少アスリートが全力を出し切った。東京パラリンピック競泳女子100メートル平泳ぎ(SB8)のフスナ・ククンダクウェ(14)=ウガンダ代表。26日の予選を突破できず大会を去ることになったが懸命に泳ぎ抜き、障害者が表舞台に出にくい母国に特別なメッセージを届けた。
生まれつき右腕半分がなく左手にも障害がある。ウガンダでは障害者が「社会から追放されている」(本人)といい、幼いころは夏でも長袖の服で腕を隠すなど、人前に出さないようにしていた。障害児を「何かのたたり」とみる地域や、捨てる親もいるという。
当初は母親も怖がっていたが、あるときに「腕を隠すことに何の意味があるのか」と気付き、「自分らしさを出せるように」とスポーツを勧めてくれた。そして始めたのが水泳だ。
ウガンダで使えるプールは少ないが、健常者らとの練習で実力を高め、2年前の国際大会でデビュー。今大会の事前会見では「1年の延期で準備が大変だったが、若く障害があっても世界の舞台に立てると示したい」と意気込んでいた。
そして迎えた東京での晴れ舞台。粘り強い泳ぎを見せたが、7人中6着に。レース後、「特別な選手と泳ぐだけでも素晴らしい経験ができた」と語った。そして障害者を奇異な目でみる母国の人々に向け、「今日の私の泳ぎを見て、その考えが間違いだと気付いてほしい」と訴えた。
将来、母国で障害者スポーツの支援財団を立ち上げる夢がある。東京は「私の長い旅の始まり」という14歳は、すでに3年後のパリ大会を見据えている。(桑村朋)