行き場失うアフガン国民 タリバン陸路脱出も妨害

21日、アフガニスタン東部とパキスタンの国境にあるトールハムで、警備に当たるパキスタンの民兵(右)とタリバンの戦闘員(AP)
21日、アフガニスタン東部とパキスタンの国境にあるトールハムで、警備に当たるパキスタンの民兵(右)とタリバンの戦闘員(AP)

【シンガポール=森浩】イスラム原理主義勢力タリバンが実権を握ったアフガニスタンで、恐怖支配の復活などへの懸念から、国外脱出を目指す国民の動きが強まっている。タリバンは出国を許さない方針のため、空路だけでなく陸路の出国も容易ではない。しかし、国内は混乱で生活が一段と困窮しかねない状況で、脱出の動きは止まりそうにない。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の報道官は20日、アフガン人の国外退避について「明確な脱出方法はない」と述べ、困難な状況を憂慮した。タリバンと政府軍の戦闘激化により、今年だけで55万人以上が家を追われたとの推計もある中、国民は行き場を失っている状態だ。

タリバンは国外を目指す国民の空港入場を妨害しているが、陸路も同様だ。有効な旅券(パスポート)や査証(ビザ)を所持していても、戦闘員が通過を認めない例が報告されている。パキスタン国境に近いアフガン南部スピンボルダックには数千人が押し寄せているが、全員の国境越えは困難なもようだ。

周辺国も流入を警戒している。1979年の旧ソ連によるアフガン侵攻以降の混乱で大量のアフガン難民が発生。UNHCRによると、2020年現在で250万人以上が国外で暮らす。主な受け入れ先の隣国パキスタンとイランは、難民のさらなる増加で国内の不満が高まるのを懸念。難民がイスラム過激派に加入する例もあり、治安への影響も不安視する。

パキスタンのカーン首相は今年6月、タリバンがアフガンを制圧すれば、「国境を封鎖する」と宣言していた。現時点で完全封鎖はされていないが、国境警備を強化した。

イランは国内に難民用のテントを設置したが、政府は「状況が改善すれば(アフガンに)送還する」と述べた。トルコは直接国境を接していないが、イラン経由での難民を警戒して軍兵士を国境付近に配置した。

ただ、アフガンからの流入を抑え続けられるかは不明だ。

アフガンは国民の約半数が1日1・9ドル(約210円)以下で生活するなど国内を貧困が覆っている。数年続いた干魃(かんばつ)で主要産業の農業は大打撃を受けた。国連世界食糧計画(WFP)によると、人口の約3分の1にあたる1400万人が飢えに直面している。現状から抜け出すため、脱出を狙うアフガン人は今後も増加するとみられる。

パキスタン国内にはアフガンから既に何らかの方法で数千人が流入したとの情報も出ている。アフガン国内では多額の現金を要求し、欧州への渡航を斡旋(あっせん)する業者が跋扈(ばっこ)し始めており、違法な出国も相次ぎそうだ。