【ワシントン=塩原永久】バイデン米大統領は25日、ITや金融、インフラ業界の大手首脳らを招いたサイバー対策会議をホワイトハウスで開いた。ロシアなどからサイバー攻撃が頻発しているが、「政府の対応だけでは課題に対処することができない」と述べ、産業界に対策強化を要請した。サイバー分野の専門人材が全米で約50万人、不足していると指摘。人材育成の遅れに危機感を示した。
会議にはIT大手アップルのクック最高経営責任者(CEO)、グーグルの持ち株会社アルファベットのピチャイCEO、金融大手JPモルガン・チェースのダイモンCEOらが出席。水道や電力・ガスのインフラ運営企業も招かれた。政府幹部も多数同席した。
バイデン氏は「米国の基幹インフラは民間企業に所有、運営されている」と指摘。「(大手企業は)サイバーセキュリティーの水準を高める能力も責任も有している」と述べ、国全体でサイバー攻撃への防御力を高めるには、官民双方が取り組みを加速させる必要があるとの認識を示した。
また、「専門人材の育成が追い付いていない」と話し、サイバーセキュリティー人材の求人に対する欠員が約50万人に達したとの試算を明らかにした。人材不足によりハッキングなどの被害を受けやすくなると懸念されている。
会議に参加したマイクロソフトのナデラCEOは、対策強化に5年で200億ドル(2兆2000億円)を投資すると表明。アマゾン・コムはハッキング対策の社員向け教育プログラムを、外部企業などが無償で使用できるようにするという。
米国では5月、パイプライン運営会社がロシア系ハッカー集団の攻撃を受け、稼働を一時停止。バイデン氏がサイバー対策強化の大統領令に署名した。米政府は民間の自主的な努力を促す一方、一部のインフラ産業ではハッキング発生の通報を義務付けるなど、規制強化も進めている。