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(207)歩くと息切れ 心臓は大丈夫?

70代の女性がクリニックを受診しました。以前に脂質異常の治療を受けていた医院が閉院し、それ以来内科への通院をやめてしまっていたそうです。血液検査してみると確かに悪玉といわれるLDLコレステロールが高く治療が必要な範囲にあるのですが、血圧がだいぶ高いことも気になりました。とりあえず脂質異常の治療薬を再開し、自宅で血圧測定を行ってもらうようにしました。

次の外来受診時に確認したところ、やはり血圧も高いため降圧薬の開始を勧めました。しかし、「どこかの大学の先生が血圧は高くても大丈夫と本に書いている」となかなか承諾が得られません。血圧の管理が血管や全身の臓器を守るためにいかに大切かということを丁寧に説明し、ようやく治療を開始することができました。

しばらく通院を続けるうちに血圧も脂質も安定するようになり、調子がよいと言っていましたが、「歩いたときに少し息切れがするみたい」と教えてくれました。心電図には少しだけ異常があり、頸動脈にも軽度の動脈硬化所見が見られます。喫煙歴も肥満歴もない女性なので狭心症の可能性はそれほど高くはなさそうだったのですが、念のために循環器内科で詳しく調べてもらうことにしました。

狭心症や心筋梗塞と聞くと、太った中年男性を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。その印象は決して的外れではなく、こういった心血管病の危険因子として男性、加齢、喫煙、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常といったものが挙げられます。女性は閉経後から増えてきます。

体を動かしたときの息切れや動悸は心臓の不調からくる症状である可能性があります。年のせい、マスクのせい、運動不足だからと本人も医師も片付けてしまいがちですが、日常生活を送る上で気になる程度のものであれば一度は調べてみてもよいかもしれません。特に急速に症状が強くなるような場合は我慢するより先に医師に相談しましょう。

この女性の場合、精査の結果治療が必要な程度の冠動脈(心臓を栄養している血管)の狭窄(きょうさく)、つまり狭心症があることが分かりました。冠動脈を拡張するカテーテル治療を受け、その後は症状なく元気に生活しています。まさか自分にそんな病気が隠れているとは考えもしなかったそうで、「病院を受診したおかげで命拾いしました」と喜んでいました。

(しもじま内科クリニック院長 下島和弥)