「アフガン協力者救出を」9・11現場でNY市民、「他国も助けを」

25日、米東部ニューヨーク市の世界貿易センター(WTC)ビル南棟跡地で、2001年の米中枢同時テロの犠牲者を追悼するリンジー・スパレタさん(平田雄介撮影)
25日、米東部ニューヨーク市の世界貿易センター(WTC)ビル南棟跡地で、2001年の米中枢同時テロの犠牲者を追悼するリンジー・スパレタさん(平田雄介撮影)

駐留米軍の撤収に伴い、イスラム原理主義勢力タリバンが復権したアフガニスタンの混乱の起点は、米国が2001年10月にアフガンに進攻する契機となった同年9月11日の米中枢同時テロにさかのぼる。その最初の現場となった米東部ニューヨーク市の世界貿易センター(WTC)ビル跡地で犠牲者を追悼する人たちに話を聞くと、アフガン人通訳ら「米軍の協力者を助けるための増援」や31日に迫る「撤収期限の延長」を求める声が目立った。

バイデン米大統領は24日の先進7カ国(G7)オンライン首脳会議で撤収期限を維持する考えを示し、複数の欧州諸国の首脳が懸念を表明した。マイケル・ローソンさん(49)は「撤収期限は一夜にして決まったわけではない」と前置きしつつ、「より多くの人を助け出せるなら撤収期限を延期すべきだ」と訴えた。

タリバンが15日に首都カブールを制圧した後に実施された大手紙USAトゥデイと米サフォーク大の世論調査(19~23日)では「米軍に協力したアフガン人通訳とその近親者に特別移民ビザ(SIV)を発給すべきだ」と回答した人が84%に上り、2大政党の民主党と共和党の垣根を越えた支持がみられた。

一方で、撤収に関するバイデン氏の手腕を支持しない人は62%に上った。ローソンさんの娘、ルースさん(35)は「カブールの空港を離陸する米軍機に取りすがるアフガン人に同情した」と振り返り、「国民や外国の信頼を失わずに撤収する、より良い方法があったはずだ」と批判。アフガンでの戦争に費やした「20年という時間が無駄になったように感じた」と嘆いた。

反対にこの20年間を「テロ攻撃の再発を防ぐ上で大きな成果があった」と前向きに評価したのは民間航空会社で働くリンジー・スパレタさん(27)。客室乗務員として「安全対策の向上を日々実感している」という。

米中枢同時テロでは、ハイジャックされた民間航空機2機がWTCの北棟と南棟、別の1機が首都ワシントン近郊の国防総省(ペンタゴン)に衝突。連邦議会かホワイトハウスを目指したとされる、もう1機が東部ペンシルベニア州ピッツバーグ郊外に墜落した。

タリバンの復権によりアフガンが再びテロの温床になると懸念される中、スパレタさんは「私たちは失敗に学び、情報機関と連携して対策を強化している。同じことは起きない」と自信をみせた。

テロと合わせて懸念されているのが女性の抑圧だ。ドミニカ共和国出身のカミラ・マリアさん(19)は「女性は働けなくなり、学校に行くのにも外出するのにも親族の男性の付き添いが必要になるだろう」とタリバンの厳格なイスラム法解釈に対する不信感を示す。「同じ女性として忍びない」と語り、米国はアフガンの基地に「留まるべきだ」と訴えた。

ただ、米軍の撤収方針自体はトランプ前政権の時代から検討されていたもので国民の超党派の支持を得ている。前述の世論調査でも撤収に賛成する人は53%に上り、反対の38%を上回った。

スティーブン・クレイグさん(63)は「米国人数千人が亡くなり、多額の戦費を費やした『終わりなき戦争』から撤収しなければいけない」と強調。撤収後にテロリストを監視し封じ込める活動では「米国が一国で責任を負うのではなく、他国も米国を助けるべきだ」と訴えた。(ニューヨーク 平田雄介)

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