妊婦と出産どう守る 感染者、第3、4波から急増

千葉県で新型コロナウイルスに感染した妊婦の搬送先が見つからずに自宅で早産し、生まれた赤ちゃんが死亡するなど、感染力が強いとされるインド由来のデルタ株が蔓延(まんえん)し感染者が増える中で、どう妊婦と、その出産を守るかが課題となっている。ワクチンの優先接種が進められ、学会は救急要請をためらわないでほしい事例を公表するなど、取り組みが広がっている。

日本産婦人科医会などによると、東京都内で新型コロナに感染した妊婦は、7月中に98人に達し、過去最多となった。これまで、流行の第3波にあたる昨年12月から今年1月と、第4波にあたる4月から5月にかけてはいずれも50人程度で推移していたが、これが倍増した格好だ。

なぜ、第5波で妊婦の感染が増加したのか。同会常務理事で日本医科大学多摩永山病院の中井章人(あきひと)院長は「妊婦の感染対策の意識は高く、感染率そのものは一般より低い。それでも全体の感染者数の増加で相対的に増えてしまっている」とその状況を説明する。

では、妊婦が感染するとどのような懸念があるのか。厚生労働省が公開している新型コロナの「診療の手引き」によると、妊娠中に感染しても、持病などがなければ、その経過は同年代の妊娠していない女性と変わらない。しかし、妊娠後期に感染すると、早産率が高まり、患者本人も一部は重症化することが報告されているという。

重症化の原因について、中井院長は「胎内で子供が育つにつれ腹部が膨らむと、肺を圧迫して呼吸困難が加速する」と、妊婦特有の事情を指摘。さらに、症状が悪化した場合でも、妊婦への投薬には慎重にならざるを得ず、治療が難航しがちという。

重症化を防ぐため、同会や日本産科婦人科学会などは積極的なワクチン接種を呼びかける。厚労省も23日付事務連絡で、「新型コロナワクチンが、妊娠、胎児、母乳などに悪影響を及ぼすという報告はない」とした上で、妊婦やその配偶者が希望する場合は、できる限り早く接種できるように配慮を促した。

東京都江東区は同日、妊婦への優先接種を始めると発表した。27日から予約を受け付け、区内10カ所程度の医療機関で接種できる。対象は妊娠12週以降で、かかりつけ医を受診した区内の妊婦だ。港区の愛育病院では25日から、受診する妊婦向けの優先接種を開始。区の担当者は「赤ちゃんと母体、2つの命を守らないといけない。できるだけ多くの方に接種してほしい」と話した。

中井院長は「妊婦自身はもちろん、夫や家族もワクチンを接種できる態勢を早急に整える必要がある」と訴えた。

一方、新型コロナに感染して、自宅などで療養する妊婦に向け、具体的に症状を示して救急車を呼ぶよう促す取り組みも始まった。

同学会などでは、息苦しくて短い文章も話せなくなったときや血中酸素濃度が92%以下になったときは、すぐに救急車を呼ぶよう訴えている。

産婦人科医や保健所に連絡が必要な症状として、①1時間に2回以上の息苦しさを感じる②心拍数が1分間に110回以上または呼吸数が1分間に20回以上③安静時の血中酸素濃度が93~94%から1時間以内に回復しない(胎児には95%以上必要)―などを挙げた。