アフガニスタンでのタリバン復権は私の所属する「ジョージタウン大学ワシントン柔道クラブ」にまで余波を広げてきた。このクラブにアフガン出身の選手がいるからだ。彼は母国で柔道の稽古に励み、全国大会でも活躍した。その後、米国に移住し、ワシントン地区に居を定め、当クラブに入ってきた。その青年がいまやアフガンの柔道の未来を心配するのだ。

なぜならタリバンがかつて柔道を禁止したからだという。私自身、2002年はじめタリバン撤退直後の首都カブールでその実態を知った。米軍と北部同盟軍の攻撃でそれまで5年間の政権支配は崩れ、タリバンは首都から敗走した。

カブールでの取材の合間に柔道が復活したという話を聞いた。タリバン時代は外国の競技だからという理由で禁止されていた柔道が息を吹き返したというのだ。まだ市内で唯一の柔道場はコンクリート床に穴だらけのマットだけ、20人ほどの青年が熱心に練習していた。コーチはアサディ・ザカリアという講道館四段の選手だった。

タリバン以前はかなり盛んだったアフガン柔道はその後、さらに普及し、水準も高めた。ザカリア氏はアフガン柔道連盟の会長ともなった。だがその柔道がまたタリバン支配下で禁止されるかもしれないのだ。(古森義久)

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