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榎本武揚と土方歳三も戦った「箱館戦争」跡をたどる

五稜郭タワー展望台から見た五稜郭。星形の幾何学模様が美しい=北海道函館市
五稜郭タワー展望台から見た五稜郭。星形の幾何学模様が美しい=北海道函館市

北海道・函館の五稜郭は江戸時代末期から明治の初め、旧幕府軍と新政府軍が戦った戊辰戦争最後の舞台として知られる。江戸を脱出した旧幕臣の榎本武揚(たけあき)はここで独立政府の樹立を宣言した。新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いていた昨年、復元された旧幕府軍の軍艦「開陽丸」など、道南各地に残る「兵(つわもの)どもが夢の跡」を訪ねた。

地上90メートルの五稜郭タワー展望フロアに上ると、足元に巨大な「星」が広がった。石垣や土塁が見事な幾何学模様を描いている。戊辰戦争の終幕となる箱館戦争の際、榎本や新選組の土方歳三(ひじかた・としぞう)ら旧幕府軍が拠点としたのが五稜郭だ。

〈外国とも条約を結びます。そうすれば京都政府とは別に、独立の公認された政府になるわけです〉

作家の司馬遼太郎は土方を描いた小説「燃えよ剣」で榎本にそう語らせている。北海道に向かう旧幕府軍の主力艦、開陽丸の艦上の場面だ。土方の胸中を司馬はこう説明する。

〈条約などはどうでもいい、要は喧嘩の一事〉

榎本の楽天性と、沈着な土方の対比が鮮明だ。

明治元(1868)年10月、軍艦に分乗した約3千人の兵は、函館北方に上陸した。榎本らはたちまち新政府の役所が置かれていた五稜郭を奪い、後に「蝦夷(えぞ)島政府」樹立を宣言した。

松前城の天守閣。箱館戦争では旧幕府軍の攻撃を受けた=北海道松前町
松前城の天守閣。箱館戦争では旧幕府軍の攻撃を受けた=北海道松前町

タワーを下り、北海道最南端の町、松前町にある松前城に向かった。蝦夷島政府樹立の前に土方らが攻めた、新政府軍側の松前藩の城だ。さらに日本海側の江差町を訪れると、3本マストの船が現れた。平成2年に実物大で復元された開陽丸。江差沖で暴風のために座礁して沈没し、旧幕府軍側は大きな戦力を失った。

復元された開陽丸。大砲など遺物も展示されている=北海道江差町
復元された開陽丸。大砲など遺物も展示されている=北海道江差町

明治2年5月、箱館戦争は新政府軍の圧勝に終わる。外国公認の政府などは夢の夢で、まさに「喧嘩の一事」でねじ伏せられた。土方は戦死し、榎本は生きて新政府の外務大臣まで務める。激動の時代に運命が交錯した2人を想像しながら、港を威圧する帆船を見上げた。(坂本英彰)

五稜郭へはJR函館駅から市電で五稜郭公園前下車、約15分。松前町、江差町へは函館からバス便があるが、各地を巡るのはレンタカーが便利。