米、アフガンでのIS系活発化を警戒

19日、アフガニスタン・カブールを巡回するタリバンの戦闘員ら(AP=共同)
19日、アフガニスタン・カブールを巡回するタリバンの戦闘員ら(AP=共同)

【ワシントン=大内清】アフガニスタンからの軍撤収と在留米国人らの退避を進めるバイデン米政権が、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)系武装勢力によるテロに警戒を強めている。アフガンで復権したイスラム原理主義勢力タリバンと競合関係にあるIS系にとっては、国内の混乱を助長することが勢力伸長につながるため、今後のタリバンによる政権樹立をにらんで攻撃を活発化させる恐れがある。

アフガンでは2015年、「ISのホラサン州」(IS―K)を名乗る武装勢力が活動を始めた。前年にイラクやシリアでISが「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)制国家」樹立を宣言したのに呼応した動きだ。「ホラサン」は中央アジアからアフガンやパキスタン、イランの一部にまたがる地域を指す歴史的呼称で、領域支配を掲げるISのイデオロギーが表れている。

IS―Kは16年、当時の指導者を米国の無人機攻撃で殺害されたが、その後も、米国の支援を受けるアフガン政府軍とタリバンの対立に乗じて勢力を維持。タリバンやパキスタンを拠点とする他の武装勢力の不満分子を吸収しつつ、アフガン政府やシーア派住民へのテロなどを繰り返してきた。IS本体がシリア内戦やイラクの政治混乱に乗じて支配地域を拡大したのと同様のパターンといえる。

IS―Kは政府軍のみならず、タリバンとも敵対。米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)によると、17年以降の約1年半だけで両勢力が200回以上交戦したと報告されている。この対立構図は現在も変わっていない。

シャリーア(イスラム法)による統治を目指す点では共通している両者が反目する背景には、アフガンでのジハード(聖戦)をめぐる主導権争いと、イデオロギー上の差異がある。主に最大民族パシュトゥン人で構成されるタリバンが同国の支配を目的とするのに対し、多民族が参加するIS―Kは、世界規模でのジハードとスンニ派支配を目指すISの過激思想を奉じ、アフガンをその拠点とすることを目指しているとみられている。

アフガン国内の無秩序状態を利用して勢力を広げたIS―Kにとり、タリバンが政権を樹立して全土を支配すれば、戦闘員の士気低下や離反などにもつながりかねない。それを避けるため、テロなどでアフガン国内の混乱を助長する戦術をとる可能性は十分にある。

サリバン米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は、在留米国人やアフガン人協力者らの退避が進む首都カブールの国際空港がIS―Kの標的になる恐れがあるとして、「脅威は現実のものであり、深刻だ」と指摘している。

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