コロナ拡大、訪問医療も限界 自宅療養増「酸素濃縮器足りず」

コロナ患者の往診に向かう悠翔会の医師ら=24日、港区
コロナ患者の往診に向かう悠翔会の医師ら=24日、港区

新型コロナウイルスの感染拡大で東京都内では病床の逼迫が進み、自宅療養者が2万4千人を上回る状況となっている。重症に陥ってもすぐに入院できないケースもあり、訪問医療の現場は「目の前で命が失われかねない」ほどの厳しい現実を突き付けられている。

佐々木淳理事長
佐々木淳理事長

「入院先が決まるまでに、酸素とステロイドを投与し、死亡リスクを下げることしかできない」

症状が重くなった自宅療養者の厳しい現状について、首都圏を中心に18の在宅診療専門クリニックを運営する医療法人社団、悠翔会(港区)の佐々木淳理事長は語る。

悠翔会は普段は病院に通えない患者への訪問医療サービスを展開しているが、都医師会の要請を受けて、8月11日からコロナ患者の往診を始めた。

担当するのは23区内にある8クリニックの医師20人で、地域医療機関が対応できない場合に保健所から往診依頼が来る仕組みだ。24日からはコロナ患者専門の往診チームを編成。入院が決まった患者の自宅から酸素を吸入する「酸素濃縮器」を回収・消毒するチームや、経過観察を行うチームとともに対応している。

24日現在で、都内の保健所から156件の訪問依頼があったが、往診した患者の8割以上は入院が必要とされる中等症以上だった。

佐々木理事長は「救急隊が3時間で100病院に電話をしても入院できず、自宅に戻された重症患者もいた」と打ち明ける。入院手配をしていた患者が亡くなるケースもあったという。

現場の課題は病床不足だけではない。感染者の増加で酸素投与に必要な酸素濃縮器も足りなくなっている。悠翔会では、メーカー7社に問い合わせたが、すべて「在庫がない」との回答だった。

「訪問医療の現場は限界に来ている。2~3週間後の感染状況を考えると、酸素をもらえず、目の前で命が失われる患者が出る可能性もある」。佐々木理事長はこう危機感を募らせ、「地域の体育館でもいいので、酸素供給用の配管を備えた〝酸素避難所〟を作るべきだ」と訴える。

都も酸素ステーションを開設して対応に当たるが、医療機関ではない旧「こどもの城」(渋谷区、130床)には配管設備がなく、酸素濃縮器を使用している。「配管で酸素を供給できるようにしないと、在宅で使える酸素濃縮器が足りなくなる」(佐々木理事長)ことも懸念される。

自宅療養者の死亡が相次ぎ、田村憲久厚生労働相は臨時の医療施設を各地に整備する意向を示した。佐々木理事長は「必要最低限の医療が受けられる施設をすぐに作らないと、現場は行き詰まり身動きが取れなくなる」と警鐘を鳴らす。(黄金崎元)