ビブリオエッセー

泣かせる2人のヒロイン 「パラ・スター」阿部暁子(集英社文庫)

読み終えて、北上次郎さんの解説に納得しました。「すごかったでしょ。泣いたでしょ」、途中からずっと山場の「『パラ・スター〈Side百花〉』はずっと泣いちゃうのである」。

その通りでした。哀しくて泣くのではなく、感動に次ぐ感動なのです。テーマは車いすテニス。車いすエンジニアをめざす山路百花と車いすテニス選手、君島宝良が、2分冊それぞれの主人公になっています。

出会いは中学校の体育館裏でした。いじめにあっている百花を見た宝良が、弾丸のようなテニスサーブを打ち出していじめっ子らを追い払ったのです。戦おうとしない百花にも一喝したそのカッコよさに、それ以後、宝良は百花の憧れの存在になります。

高校生になり、状況が一変したのは宝良の交通事故でした。インターハイにまで出場した宝良でしたが、車いす生活となって一旦はテニスをあきらめます。が、物語はここから。百花と車いすテニスのジャパンオープンをライブで見た宝良は再びラケットを握る決意を固めます。百花も立ち上がりました。「たーちゃんはパラリンピックにも出るくらいの、最強の車いすテニス選手になって。わたしは、たーちゃんのために最高の車いすを作るから」。

車いすメーカーに就職した百花。競技用車いすのことは初めて知りました。その繊細な手仕事や国、メーカーを超えたメンテナンスの話などアスリートを裏で支える人たちの姿にも涙が出ました。心が洗われるような物語です。

最強選手との戦いのあと終章の舞台は東京パラリンピックへ。有明テニスの森に、あの人の姿がありました。

堺市北区 住川章雄(69)

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