沈没船は、古代からの「タイムカプセル」だ-。水底に沈んだ船や遺跡などを発掘研究する学問「水中考古学」が、近年国際的に盛り上がりを見せている。その魅力を存分に紹介するエッセー『沈没船博士、海の底で歴史の謎を追う』(新潮社)を刊行した海外で活躍する水中考古学者の山舩(やまふね)晃太郎さん(37)は「一人でも多くの人にこの学問の面白さを知ってもらい、研究者を増やせれば」と熱く語る。
スクーバ以降に発展
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の推計によると、「水中文化遺産」と認定される100年以上前の沈没船は、世界中に300万隻ほど存在するという。そして海底の砂の下に埋もれた船材や積み荷は、酸素が遮断されるため千年以上の時を経てもついこの間沈んだかのような良好な状態を保つ。潜水技術の進歩により、これまで調査不能だった海や湖の底の〝宝の山〟にアクセスできるようになって以降、考古学の一ジャンルとして水中考古学が徐々に注目されるようになってきた。