【話の肖像画】評論家・石平(59)(23)「尖閣解決」のチャンス、2度逃した日本 - 産経ニュース

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評論家・石平(59)(23)「尖閣解決」のチャンス、2度逃した日本

インタビューを受けて=平成30年
インタビューを受けて=平成30年

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《わが国固有の領土、尖閣諸島周辺の領海へ、中国公船が侵入を繰り返している。海上保安庁は懸命に守ってきたが、政府は「遺憾」であると口先だけの抗議を行うだけだ》


尖閣諸島は歴史上も国際法上も、まぎれもなく日本の領土です。中国の領土であったことなど一度もありません。それなのに日本政府は、事なかれ主義に終始し、自衛隊の駐屯どころか、公務員1人常駐させられないでいるのです。

偽装漁民が先か、軍隊なのか、は分かりませんが、中国はいつか、尖閣に人員を上陸させるかもしれませんよ。そのときに日本のトップは国土防衛のためにすぐさま自衛隊の出動を命令できるでしょうか? 新型コロナウイルス禍や東京五輪などをめぐる対応でもリーダーシップを発揮できず、野党などの抗議に右往左往している姿を見ていると、どうも、そんな毅然(きぜん)とした対応を取れるとは思えません。

結局は、「米軍頼み」なのでしょう。確かに、現在のバイデン大統領は、日米安保条約で共同防衛義務をうたった第5条の適用範囲内に「尖閣諸島が含まれる」ことを明言しています。ただし、それは尖閣諸島が日本の施政下にあることが前提です。日本は尖閣諸島を実効支配してきましたが、現状はかなり危うい。国際社会が果たして認めてくれるかどうか。


《この問題の解決をめぐって、日本は少なくとも2度チャンスを逃した、という》


1回目は1972(昭和47)年の日中国交正常化交渉のときです。このとき、当時の田中角栄首相と会談した中国首相の周恩来(しゅう・おんらい)は、尖閣問題について「今は話したくない」と言いました。国交正常化を急いだのは国際社会で孤立していた中国なのです。日本にとっては、あわてて正常化しなければならない理由などなかった。ならば、田中首相は「(尖閣諸島への)領有権主張を引っ込めよ。そうでなければ、正常化交渉はやめる」と、席を蹴って帰ればよかったのです。

2回目は78(昭和53)年、中国の最高権力者、鄧小平(とう・しょうへい)が来日したとき。このときも困っていたのは中国です。鄧小平が進めていた改革開放政策のために、日本と平和友好条約を結び、日本からの政府開発援助(ODA)と先端技術を欲しがった。ノドから手が出るほどに…。

ところが、日本政府は鄧小平が打ち出した、尖閣問題の〝棚上げ論〟を受け入れてしまう。この問題にケリをつけるチャンスを自ら放棄してしまったのです。日本政府は国家の根幹である領土問題を軽く見ているといわれても仕方がない。国際社会の常識からすれば、到底、信じられない行動ですよ。


《尖閣問題で今後、中国はどう動くのか。日本はどう備えればいいのか》


中国にとっては、まず台湾でしょう。習近平国家主席は自信過剰の独裁者で、国際社会から何を言われようが、聞く耳を持っていない。いちかばちかの行動(台湾侵攻)に出る可能性はあると思っています。そのときの米軍の動き次第では、次は尖閣を取りに来るでしょう。

日本はどうするか? 政府というよりも「日本人の覚悟」が問われることになる。中国と一戦を交えても領土を守りたいのか、そうではないのか? そういう覚悟です。(聞き手 喜多由浩)

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