酒の蔵探訪

オラホビール(長野県東御市) 個性的な商品で首都圏に切り込む

オラホビールの醸造設備=長野県東御市(原田成樹撮影)
オラホビールの醸造設備=長野県東御市(原田成樹撮影)

一番の売れ筋は「キャプテンクロウ エクストラペールエール」。インパクトある名前に、デザインも珍しいブルーを基調とし、カラスの海賊が睨(にら)みを利かす。味はホップが利き、苦味もしっかりした「ペールエール」という英米で人気のジャンルだ。日本の中高年男性が風呂上りに渇きを癒やすラガー(下面発酵)タイプとは方向性が違い、20代をはじめとする若者、とくに女子にも支持される香りを楽しむビールだ。

ここにたどり着くには長い道のりがあった。日帰り温泉施設「湯楽里館(ゆらりかん)」が醸造所を併設したのは平成8年、ビール製造免許の規制が緩和され、全国各地で地ビール(クラフトビール)工場が相次いだ時期だ。ブランドのオラホとは「私(たち)の」という方言。

続いた厳しい時代

クラフトビールの主流は香りや色を楽しむ上面発酵タイプで、日本人が飲み慣れた味とは違う。「観光地の土産」という評価に甘んじる厳しい時代が続いた。

風向きが変わったのは、平成12年頃から。首都圏などでクラフト専門店がはやり、ビアフェスなども開かれて若い客層にじわじわ浸透。10年ほど前からはスーパーなど小売りも売り場を割くようになった。

当初の醸造設備は熱処理ができないため賞味期限が短く、一般流通にのせるのは難しかったが、オラホはここに活路を見いだす。平成26年7月、委託生産で、市場に投入した常温商品が「キャプテンクロウ」(350ミリリットル、税抜き298円)だ。

缶をよく見ればオラホビールとあるが、新生ブランドとして訴求。「デザインも味も振り切った。パケ(パッケージ)買いも促したかった」と戸塚正城工場長。斬新さで、切り込みに成功した。