100歳時代のマネー講座

60代から始める「6割サイズの暮らし」

この先、生きていくのにいったい「いくら」かかるのか―。ふと不安になることはありませんか。そんな不安を現実にしたのが、令和元年に巻き起こった「老後2000万円問題」でした。

この額が示されたのは金融庁の審議会の報告書。年金暮らし(無職)の高齢者世帯(夫婦2人)は年金では賄えず、毎月、約5万円不足すると試算。それに基づき老後30年分として2000万円の蓄えが必要とされ、不安が広がりました。つまり、退職後、年金で賄えない分は、貯蓄などを取り崩しながら暮らす必要がある、という指摘でした。

「老後2000万円問題」の余波

試算に用いられたのは平成29年の家計調査の統計。毎月の支出は約26万円、収入は年金(社会保障給付)など約21万円でした。その後、別の年の家計調査では毎月の赤字が少なく試算され、2000万円が独り歩きする風潮は薄まりました。

ただ、「2000万円問題」の報告書は「現実」を突きつけたともいえます。「退職金は近年減少してきている」「公的年金の水準が今後調整されていく見込み」…。いつか自分に起こると捉え、早い段階から対策を考えだしたほうがよいことでした。

◇「必要な収入と生活費」グラフィックを見る

上のグラフィックは、世帯主の年代ごとに、世帯(2人以上)の平均的な生活費と、毎月の収入を示したものです。家族構成など個別の事情を反映しない平均的な数字ですが、眺めてみると「人生100年」の後半生の暮らしがどう変化していくかをイメージできます。

まず、60歳を境にして、暮らしの収支は大きく変わる傾向がうかがえます。

60歳で定年退職し、以降も働き続けた場合でも、収入は以前の6割程度になるなど下がるのが一般的なようです。再雇用や再就職などで雇用形態が変わることも関係していると思われます。

一方、無職になると、年金受給を60歳に繰り上げても、月々の生活費は不足しそうです。受給開始が通常の65歳からでも、足りるとはかぎりません。これは月々5万円ほどが不足するとした「2000万円問題」のイメージで、5万円にはならなくても、貯蓄を取り崩して暮らしていく可能性が高そうです。

もちろん支出も子育てや会社勤めが終わると変化しますが、その減少カーブは緩やかです。

表の金額は目安にすぎません。安定した暮らしを長く続けていくために、何をどう準備すればいいのか。それを考えるにはまず、家庭ごとに支出と収入の全体像を大づかみに把握することが先決です。

家計見直し、まずは生保や携帯契約

今の「暮らし」にかかる支出と収入、貯蓄を一通り確認したら、次は自分の老後の暮らしぶりをイメージしてみましょう。

「60歳を過ぎ、収入源が変わったら、生活費は以前の『6割』を目指すイメージを持ちましょう」と話すのは、ファイナンシャルプランナーの千葉晃一さん。

家計の見直しは「まずは生命保険や携帯電話の契約内容などを見直し、次に全体からまんべんなく削れないか検討するとよいでしょう」(千葉さん)。

また月々の生活費以外にも、将来的なリスクやイベントに備えた特別費用も見積もりたいところです。

例えば、高齢期の住まいに有料老人ホームを考えるなら、額は数万~数百万円程度とまちまちですが、入居一時金などの前払いが必要な場合もあります。住宅改修費、車の買い替え費、葬儀費などが必要な人もいるでしょう。

一方、旅行や家族とのイベントにいくらくらいなら使えそうか見積もっておくと、計画が立てやすいでしょう。

何が必要で、不要なのか。そんな意識で生活費の各費目への額と配分を見直しておくと、備えるべき資金の額が想定でき、リタイア後の暮らしの切り替えもスムーズにいきそうです。

人生100歳時代。将来の資金はどれぐらい必要なのか、どうためて、増やせばいいのか―。月1回、分かりやすく解説します。