勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(294)

唯一の救い 集客あの手この手、応援歌は早見優

勇者さわやかイメージソングを歌う早見優
勇者さわやかイメージソングを歌う早見優

■勇者の物語(293)

昭和58年シーズン、4月30日の近鉄5回戦、西宮球場は大興奮に包まれた。いや、包まれる予定だった。

試合前のビッグイベントとして、勇者の誇るバンプと福本の〝俊足コンビ〟と競走馬(サラブレッド)との60メートル「〝夢〟競走」が行われたのである。

スタンドには2万8000人の大観衆。この日、甲子園球場での阪神―広島戦の観衆が2万6000人だから2000人も多い。午後2時45分、2人と1頭はスタートラインに並んだ。実は当初はコンビではなく簑田を入れた〝俊足トリオ〟の予定だった。だが、「そんなアホな企画には出たくない」と簑田が出走拒否。では福本は―。

「ボクまで拒否したら球団も困るやん。こんな企画やります―と公表したんやし、ファンも楽しみにしてる」

さすが〝大人〟のフクさんである。

ドーンと号砲。バンプと福本が走る。うん、馬は? ソッポを向いてイヤイヤ。なんとか走らせたものの、レースにならずスタンドも大爆笑。

お客さんに来てほしい―。当時、球団の努力には涙ぐましいものがあった。2メートルの「ブーマーパン」にブーマー人形が飛び出す「ブーマーボール」。全国の中学や高校を地道に回っては、修学旅行のコースに「西宮球場で野球観戦」を入れてもらった。地元関西の小学校にも社会見学の一環として、アストロビジョンや人工芝、選手ロッカーやトレーニングルームなど、報道陣にも非公開の場所を大公開。だが、それでも観客動員はなかなか伸びなかった。

「昨年は約63万人。ことしはブーマー人気でなんとか100万人に…」

その期待のブーマーが、入団前に受けた膝の手術の影響で思ったような数字が残せない。「場外ホーマーが出たら」と企画した2メートルの「ブーマーパン」も場外どころか、結局、普通の本塁打も17本止まり。「ブーマーボール」も飛び出す仕掛けが技術的に難しく、これまた企画倒れ。唯一、成功したのが新しい球団のイメージソング『Yes You Win!』だ。「♪恋はすばやくぅ~、目にも止まらぬぅ~」と当時、大人気のアイドル歌手、16歳の早見優が歌った。

アストロビジョンに映し出される優ちゃんのかわいいこと。勇者ファンには唯一の救い?になった。(敬称略)

■勇者の物語(295)