世界の論点

タリバン、カブール制圧

政権掌握後、タリバンが初めて開いた記者会見 =17日、アフガニスタン・カブール(ゲッティ=共同)
政権掌握後、タリバンが初めて開いた記者会見 =17日、アフガニスタン・カブール(ゲッティ=共同)

アフガニスタン駐留米軍が撤収を進める中、イスラム原理主義勢力タリバンが15日、怒濤(どとう)の勢いで首都カブールを制圧。民主政権はあっけなく瓦解(がかい)し、タリバンが復権した。米中枢同時テロ後のタリバン政権崩壊から20年。米メディアは性急な撤収が今回の事態を招いたとして、バイデン政権の失態を厳しく糾弾した。一方、中国の官製メディアは「米国の信頼性に大打撃」と主張し、米台離反を狙って台湾を牽制(けんせい)した。

≪ポイント≫

・米軍のプレゼンス維持で回避できた現況

・撤収以前よりも多くの兵力投入が必要に

・「米国式民主主義は合わない」と中国指摘

・「台湾の運命を示す」と中国は蔡政権牽制

米国 撤収急いだ失態に非難の嵐

バイデン米政権によるアフガニスタン駐留米軍の撤収をめぐっては、超党派で批判の声が上がっている。撤収という決断の是非に加え、タリバンによる急速な勢力拡大とカブール制圧を想定できず、アフガンに滞在する米国民や米軍に協力したアフガン人通訳らが生命の危険にさらされる事態を招いたためだ。

米紙ワシントン・ポストは17日付の社説で、タリバンが一気に全土を席巻するような状況は「回避できたはずだ」と批判した。

社説は、駐留米軍が2014年以降、アフガンで大規模な地上戦闘を実施しておらず、米軍の犠牲者数も比較的少数だったと指摘する。

その上で、米軍および同盟諸国の軍がアフガン国内に小規模のプレゼンスを維持し、アフガン治安部隊と一緒にタリバンや国際テロ組織アルカーイダを封じ込める一方、外交官や民間団体がアフガンの市民社会の育成に取り組めば「大して費用がかからず、米国の安全保障と国際的信頼を維持するのに見合う行動だったはずだ」と訴えた。

社説はまた、撤収するにしても米国民や米軍の協力者らの撤収完了まで一定規模の米軍のプレゼンスを維持することもできたと指摘した。

バイデン氏は、今後のアフガン政策をめぐり政権高官や外部の専門家から、トランプ前政権によるタリバンとの停戦合意の破棄を含めた多様な選択肢を提示されていた。

しかし、バイデン氏はトランプ前大統領と同様、「終わりなき戦争を終わらせる」の一点にこだわり、自ら定めた8月31日の期限に向けて性急に米軍の撤収を進め、今回の失態を引き起こした。

バイデン政権がアフガン撤収を主張した理由の一つは、中国やロシアとの大国間競争をにらみ、アフガンに投じられていた資源や関心を中露に振り向けるためだった。

しかし、米紙ウォールストリート・ジャーナルは18日付の社説で、タリバンの勝利を受けて「米国は今や、米軍撤収以前よりも多くの関心と兵力をアフガンに投入せざるを得ない状況に陥った」と指摘した上で、中国が米政権の失態を「台湾と米国を嘲笑するために活用している」との見方を示した。

中国が今後、米台の離反を狙って「米国はアフガンと同様に台湾を見捨てる」といった政治宣伝を仕掛けてくる公算は大きい。米国にとっての台湾の重要性を考慮すれば、バイデン政権の台湾重視政策は揺るがない。しかし、中国が「米国は台湾に介入しない」と見誤るようであれば、「世界は一層危険な状態に置かれる」と社説は警告した。(ワシントン 黒瀬悦成)

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