立憲民主党などの野党にとって横浜市長選での統一候補勝利は、次期衆院選で政権交代を目指す上で追い風となりそうだ。菅義偉首相の応援を受けた小此木八郎氏を破ったことで、菅政権への有権者の不信を間接的に浮かび上がらせた形となり、選挙戦を通じた野党間の協力も衆院選の共闘に向けた実績となった。
立民は横浜市を地盤とする党代表代行の江田憲司衆院議員が肝煎りで山中竹春氏を擁立した。当初から、市民の関心はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致問題よりも、新型コロナウイルス対策にあるとみて菅政権のコロナ対応を争点に位置づけた。
医療の専門家である山中氏には、立民が推薦、社民党が支援し、共産党も自主的支援に回ったほか、立民の支持母体の連合が推薦した。共産が独自候補の擁立を見送って一本化した候補が連合と共産の応援をともに受ける構図は、立民が次期衆院選の選挙区で描く選挙協力に近い形となった。
立民の平野博文選対委員長は「国民の命と暮らしを守る政治への転換を求めて、次期衆院選に向けた取り組みを一層強化していく決意」との談話を出し、共産の小池晃書記局長はツイッターに「市民と野党の共闘の力が発揮された」と投稿。同党幹部は「政局を野党が主導していく上でも非常に大きなプラスの影響が出る」として、立民側に衆院選の協力に向けた協議開始を改めて求める構えだ。
ただ、候補者が乱立した図式を衆院選に当てはめることは難しい。菅内閣の支持率が低迷する中でも自民の支持率は堅調な一方、立民をはじめ野党の支持率はそれぞれ1桁台に沈む。このため、立民内には「8人も出た選挙の結果の国政への影響はない」と野党の伸長に懐疑的な見方を示す幹部もいる。(原川貴郎)