都内重症病床の使用率7割 民間病床拡大進まず

新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、東京都内の重症者向け病床は7割前後が埋まった状態が続いている。病床の逼迫(ひっぱく)や医療スタッフ数の限界から、重症者の受け入れを断るケースも相次いでおり、医療関係者は「現場にもう余裕はない」と声を上げる。医療提供体制の確保が急務だが、病床数の拡大が思うように進まない民間医療機関もあり、都は保有施設などの活用を急ぐ。

都内の重症者は、感染力が強いインド由来の変異株「デルタ株」の広がりで8月に入って急増。同月12日に初めて200人を超え、5日後の17日には276人に上った。都内で確保された重症者向け病床392床の使用率は70・4%に達した。

数字上は3割近くが空いているように見えるが、昭和大学病院(品川区)の相良博典院長は「新型コロナ対応以外の通常診療も含めて考えれば、現場はすでに限界に近い」と警鐘を鳴らす。

同院は今月上旬まで中等症患者向けに30床、重症者向けに8床を確保してきたが、感染者の急増を受け、順次病床を増やしている。すでに重症病床は16床まで拡大した。

それでも、重症者の搬送要請が数件重なれば、医療スタッフのやり繰りに限界が生じ、重症度の高い患者しか受け入れられないこともある。院内の中等症患者が重症化した場合に備えて、一定の病床を空けておく必要もある。ベッドを増やしたとしても、「満床」まで受け入れられないのが現実だ。

同院は今後も、重症病床を22床、中等症病床を60床まで増やす方針だが、都内には病床の確保が進んでいない医療機関も少なくない。

都は7月26日に各医療機関に対し、救急医療の縮小や予定する手術の延期などによる病床数の拡大を要請した。すでに確保している5967床と合わせ、最大で6406床まで増床したい考えだが、1カ月近くが経過した今も最大数の確保には至っておらず、都の担当者は「めどは立っていない」と打ち明ける。

都は各医療機関に個別に病床確保を促すなど対応を急ぐが、一方で都が保有・管理する施設の転用も加速させる。「船の科学館」(品川区)敷地内に設置している軽症者ら向け宿泊療養施設(140室)の一部を利用して、重症から中等症などに症状が改善した患者を速やかに受け入れられるようにする。重症病床の回転率を上げる狙いで、都に同施設を貸与している日本財団などと調整を始めた。

病状が急変した自宅療養者に酸素投与などを行う「酸素ステーション」も渋谷区など都内3カ所に新たに整備する。いち早い対応で重症化を防ぎ、再び自宅で療養できるようにする仕組みだ。

東京五輪・パラリンピックの競技会場や関連施設を臨時の医療施設となる「野戦病院」に転用する検討も始めた。医療向けの利用が想定されていない建物の構造や医療設備の整備など課題は多いが、田村憲久厚生労働相は20日、「臨時の医療施設の確保を検討してもらわなければならない」と各自治体に早期の施設設置を求めた。

相良氏も「医療従事者も含めた『医療資源』を集約すれば効果的な対応ができる」と「野戦病院」の必要性を訴えている。