拡声器やまぬ原爆忌「厳粛条例」でも程遠い静謐

実際、式典当日は「昨年以上のけたたましさ」(市民の会)となり、条例が「表現の自由」に制約を与えるものではなかったことは逆説的に証明された。

ただ条例の趣旨に照らしても、式典で静かな環境が確保されないのは望ましくない。「問題の根本は市の消極姿勢にある」と指摘するのは、市民の会代表の石川勝也さん(65)だ。

デモ隊は例年、平和記念公園内のドーム北側で抗議集会を行っている。市は「公園の自由使用」と捉え、デモを届け出の対象としていない。「許可制とすれば、独占的な公園使用を認めることとなり、デモ参加者以外は立ち入れなくなってしまう」(市緑政課)ことがその理由だという。

だが、デモでは参加者が「人間の鎖」ともいえる人垣をつくり、事実上、一般の利用者が公園に入れない空間ができている。

石川さんは「デモ団体の活動は公園の占拠と同じだ。行政には実効性のある対応をお願いしたい」と、怒り交じりに話す。

「無言の抗議」に150人

市も手をこまねているのが実情だ。デモの音量を式典会場から10メートル地点で85デシベル以下とし、拡声器を式典会場に向けないようにすることなどで団体側と事前に調整を図ったが、条例の存在を理由に態度を保留された経緯がある。

平和記念式典会場に近づきながら気勢を上げるデモ隊。沿道で無言の抗議を行う人の姿もみられた=8月6日午前、広島市中区(矢田幸己撮影)
平和記念式典会場に近づきながら気勢を上げるデモ隊。沿道で無言の抗議を行う人の姿もみられた=8月6日午前、広島市中区(矢田幸己撮影)

市の担当者は「静かな環境は、条例が示すように『市民等の理解』の上に成り立つ。(団体側に)理解を求めて粘り強くお願いしていくしかない」と話す。

政権に対する激しい抗議などのデモは来年以降も続くことが濃厚だが、平和を願う場で騒乱を想起させる光景を苦々しく思う市民は少なくない。石川さんによれば、市民の会が行うデモ隊への「無言の抗議」に集まった人は昨年の約3倍の150人に上ったという。

一人一人の〝違和感〟が、8月6日を変えるきっかけになるかもしれない。(矢田幸己)