主張

クリミア会議 「領土」で国際連帯を示せ

ウクライナのゼレンスキー政権が、ロシアによって不法占拠されている南部クリミア半島の奪還を訴える初の国際会議を開く。北方領土問題を抱える日本は、外相クラスを参加させ、ロシアの不法行為に対する国際的連帯を鮮明にすべきだ。

会議は「クリミア・プラットフォーム」と名付けられ、23日にウクライナの首都キエフで開催される。これを阻止しようとするロシアの圧力にもかかわらず、米国をはじめとする約40カ国が参加を表明した。

クリミア併合をめぐっては、先進7カ国(G7)などが対露制裁を発動してきたが、ロシアは返還に応じる姿勢を見せていない。会議は、クリミアの「占領状態」を終わらせることをうたった初の専門的な枠組みである。

ロシアは2014年3月、ウクライナで親露派政権が崩壊し、親欧米派が実権を握ったことへの報復として一方的にクリミア半島を併合した。軍の特殊部隊を展開させ、巧みに情報宣伝工作を行っての領土奪取だった。旧ソ連が第二次大戦末期、火事場泥棒のように北方四島を強奪したのと同様の許されざる不法行為だ。

ロシアはこの7年間余り、クリミア半島の軍備を増強し、実効支配を強化し続けてきた。6月には黒海のクリミア沖を航行した英海軍の駆逐艦がロシア軍の警告射撃を受けた。黒海やアゾフ海の現状がロシアによって力で変更され、航行の自由が奪われている。

人権侵害も深刻だ。併合に異を唱える人は容赦なく投獄されており、14年以降に半島からの移住を余儀なくされた人は約4万8千人にのぼる。半島のイスラム系先住民族、クリミア・タタール人の民族組織「メジュリス」が活動を禁止されるなど、タタール人への弾圧はとりわけ苛烈である。

こうした中でクリミア・プラットフォームは、民主主義諸国が対露政策や制裁をすり合わせ、協調した行動をとるための重要な場になる。日本が率先的役割を果たすのはもちろんのこと、領土問題を国際社会に訴えるウクライナの努力をわが国も見習いたい。

折しもアフガニスタンからの米軍撤収の混乱をめぐり、ロシアや中国が「米国は信頼できるパートナーでない」といった宣伝工作を活発化させている。米国にもウクライナを支える力強い姿勢が求められる。

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