不動産取引にも「ワンクリックで購入」の感覚を 米大手サイトがAIの進化を加速させる理由

ニューラルネットワークを使う理由

Zillowが住宅価格評価のアルゴリズムを開発し始めたのは15年前で、単一のニューラルネットワークへの移行に着手したのは19年のことだ。同社はこれに先立ち、価格推定機能の向上のための公開コンテストも開催しており、100万ドル(約1億1,000万円)の賞金を目指して3,000以上のチームが参加した。

コンテストでは、最終選考に残った3チームのうち2チームがニューラルネットワークに基づくアプローチを採用していたという。Zillowによると、ディープラーニング(深層学習)の一種であるニューラルネットワークは、住宅価格の推定に使われるデータ間の関係性を認識する能力が高いという。

この新しい手法は、例えばウォーターフロントの物件価格や近隣住宅の大きさが評価に与える影響の把握に長けていると、ハンフリーズは説明する。「従来のアプローチでは、ある郡におけるウォーターフロントの住宅価格を把握することが困難でした」と、彼は言う。「しかし、全米を対象に訓練されたニューラルネットワークなら、国内の他の地域におけるウォーターフロントの住宅価格に関する情報を、ウォーターフロントの住宅が少ない地域にも適用できるのです」

Zillowによる見積もりは、面積や立地条件といった物件に関する数十もの要素に基づいて導き出され、物件によっては税務評価や販売記録から抽出したデータも含まれる。19年からは、物件情報の写真から推定価格を導き出すコンピュータービジョン・システムも採用しているという。

「ワンクリックで購入する感覚」を不動産に

Zillowの最高経営責任者(CEO)のリッチ・バートンは、住宅の買い取りプログラムを拡大することでネット通販の「ワンクリックで購入する感覚」を不動産市場に取り入れたいと考えている。「最終的にはこの国のほとんどの住宅が、当社の『即時オファー』による買い取り対象に入るようにしたいと考えています」と、バートンは言う。在宅勤務を増やしたい人が増えたことでミレニアル世代が住宅の購入を検討するなど、同社が「大規模な再編」と呼ぶいまの状況も生かしたい考えだ。

世界中で何十億もの人々が毎年、Zillowの物件情報を見ているという。だが、その多くは夢を見たり、ちょっと覗き見したりすることが目的だとバートンは指摘する。そんな人々に対してZillowは、「興味を引き、楽しませる」ことを心がける一方で、実際に家を売買する人々にはより多くのサービスを売り込みたいと考えている。Zillowでは家の買い取りのみならず、住宅ローンや住宅保険、エスクロー(第三者預託)手続きのサポートといったサービスにも手を広げているという。

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