ロードスターを再び レストアに賭けた町工場

レストアされたロードスターとともに記念撮影に収まる依頼者の松田浩和さん(左から2番目)ら(清金誠司さん提供 一部画像処理しています)
レストアされたロードスターとともに記念撮影に収まる依頼者の松田浩和さん(左から2番目)ら(清金誠司さん提供 一部画像処理しています)

マツダを象徴するスポーツカー「ロードスター」が登場してから30年あまり。4代にわたってモデルチェンジされてきたが、旧型モデルはいまも根強い人気がある。この往年のロードスターを見事によみがえらせることで話題の町工場がある。広島市安芸区の自動車修理会社「セイコー自動車」。長年培った板金や塗装の技術を生かしたレストアで、ロードスターファンを魅了している。

ロードスターの車体をコツコツと美しく仕上げていく。根気のいる作業だ=7月12日、広島市安芸区
ロードスターの車体をコツコツと美しく仕上げていく。根気のいる作業だ=7月12日、広島市安芸区

コロナ禍を乗り越え

セイコー自動車は昭和44年、現社長の清金誠司さん(54)の父、光憲さんが設立し、板金や塗装を中心に車の修理や自動車整備を行ってきた。

新型コロナウイルスの影響は町工場にも暗い影を落とした。修理の依頼は激減。売り上げは大きく落ち込んだ。

長年培ってきた板金や塗装の技術があり、溶接や研磨の経験を生かして苦境を乗り切りたい。危機感を抱いていた清金さんが考案したのは、古い車を新品のように近づけてよみがえらせる「レストア」だった。

注目したのがロードスターだ。「ライトウエートスポーツカー」という軽快な走りを楽しめるスポーツカーで、構造自体が工夫されてつくられているところに魅了された。ネットでの検索数も多い。修理経験があったことも大きかった。

「中途半端なことはできない」とロードスターのレストアを専門に扱う工場として、従業員全員が約3カ月間、朝早くから座学も含めた勉強時間を設け、専門知識をたたき込んだ。工場の存続もかかっている。従業員全員がロードスターと真剣に向き合っていた。

高度な技能を生かす

従業員の村田宏文さん(51)もその一人。元ディーラーでロードスターの整備もしていたという村田さんは、レストアについて「何もこのまましなければスクラップになってしまう車がどんどんきれいになっていく。そのよみがえっていく工程が魅力」と語り、「エンジンがかかった瞬間はやっぱり『おーっ!』と思います」と笑顔で語る。

レストアは一筋縄ではいかない。エンジンを手作業でばらし、修理する。サビなどは超難敵だ。塗装されたその下にサビが広がっていることもあることから、塗装を一部はがしてからサビを除去するのは手間がかかるという。

シャーシなどすべてが外されたロードスターの車体。この状態からレストアされる=7月12日、広島市安芸区
シャーシなどすべてが外されたロードスターの車体。この状態からレストアされる=7月12日、広島市安芸区

ボンネットやドアなどのへこみは、何日もかけてハンマーで丁寧に少しずつたたくなどして直す。年月のたった車ゆえに部品の交換ができないことが多い。これも手作業で直していくのだ。

こうしたへこみや傷も手作業で直される(清金誠司さん提供)
こうしたへこみや傷も手作業で直される(清金誠司さん提供)

こうした作業をコツコツ積み重ねていくには相当な根気も必要だ。従業員総出で取り掛かっても1台のレストアに半年を要する車もあったという。村田さんは「お客さまは製造から30年以上たっていてもロードスターに乗ろうとされる。それだけ思いは強い」と説明する。

最高の笑顔のために

セイコー自動車が昨年夏からこれまでにレストアを手掛けたのは4台。そのほか、研究などのために購入したロードスターもレストアした。思い切って工場をレストア専用にする改造にも踏み切った。

 客の喜びの声は確実に届いている。すでに走行距離20万キロ以上で廃車にしようとしていた山口県在住の依頼主から相談を受けた清金さんは「まだ行けますよ。十分乗れますから、直しましょうと言って直させてもらった」という。

広島県廿日市市在住の依頼主は、若い頃に乗っていたロードスターで「息子と一緒にドライブしたい」という夢を清金さんに熱く語った。それは、倉庫で約15年間も寝かせていたというロードスター。いつか復活させたいと思っていたが、どこに頼んでいいかわからなかったという。

美しくレストアされたロードスター(清金誠司さん提供 一部画像を処理しています)
美しくレストアされたロードスター(清金誠司さん提供 一部画像を処理しています)

「何とか直してほしい」という依頼主の思いに応えたいと必死にレストアした。「僕らが想像していた以上のお客さまの笑顔で、びっくりしました」と語る清金さん。「あんなに喜んでもらえるとは」と感無量だった。

レストアとは「お客さまの思いを聞き、対話をしながら一緒につくっていく感じ」という。

「労力と時間、技術はかかりますが、夢があります。僕たちができるレストアをこれからどう生かしていくか」。ロードスターの〝聖地〟へと歩み始めたセイコー自動車の挑戦は始まったばかりだ。(嶋田知加子)