「タリバンが変わった」は楽観的見方 中東調査会研究員 青木健太氏

19日、アフガニスタン・カブールで、イスラム主義組織タリバンの白い旗をはためかせながら警備に当たる戦闘員の車両(共同)
19日、アフガニスタン・カブールで、イスラム主義組織タリバンの白い旗をはためかせながら警備に当たる戦闘員の車両(共同)

アフガニスタン政府軍への勝利宣言から1週間がたち、イスラム原理主義勢力タリバンは融和的な政策を打ち出しているが、タリバンが「変わった」とみるのは楽観的だ。

女性の権利尊重も主張するが「イスラム法の範囲内で」という条件を付けており、裁量権はタリバン側にある。欧米諸国が思うような権利の保障ではないだろう。「国民に恩赦を与える」と宣言しても投降した特殊部隊員を処刑し、「テロに土地を使わせない」と断言しても国際テロ組織アルカーイダは国内にいる。タリバンはメディア戦略がうまくなったと見るべきで、言行不一致がある。今後の行動を慎重に見極めるべきだ。

勝利宣言から1週間がたってもタリバンの政権構想は見えず、誰が指導者になるのか、国を動かす評議会のような組織ができるのかも不明だ。治安部門の統廃合や整理も重要な課題だが見通しは分からない。

何よりガニ政権からの平和的な権力移行が重要だ。一方的に他の勢力を排除して政権を樹立した場合、タリバン政権を承認する国は限定的となるだろう。国際社会にとって、現地大使館などを通じて直接取る情報は欠かせないだけに、外交関係を樹立する国が少なければ監視の目が減る。そうなれば、アフガンが再び「テロの温床」となっても見抜けない可能性が高まる。

アフガン情勢は日本にとっても無関係ではない。現地情勢を分析する態勢を構築する必要がある。また、日本は米国に次ぐ7000億円をアフガンに支援した。うまくいったこと、失敗したことを第三者の手できちんと評価し、今後の外交政策に反映させていくべきだ。(聞き手 森浩)

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