鬼筆のスポ魂

白鵬「治外法権」ますます 協会の振り上げた拳どこへ 植村徹也

7月27日、東京五輪の柔道会場を訪れ、大野将平(右)と言葉を交わす大相撲の横綱白鵬=日本武道館
7月27日、東京五輪の柔道会場を訪れ、大野将平(右)と言葉を交わす大相撲の横綱白鵬=日本武道館

あれから20日以上過ぎたのに何の説明もなければ、処分も全く出ていない。日本相撲協会の幹部が「横綱失格」とまで言及したのに…だ。横綱白鵬(36)=宮城野部屋=の所業についてである。組織としてのガバナンスが効いていないと言われても、仕方のない事態だろう。

日本相撲協会の芝田山広報部長(元横綱大乃国)が激怒したのは、東京五輪期間中の7月27日に起きた出来事が原因だった。「なんで白鵬は関係者でもないのに、試合を見に行けるのか。ダメでしょ、あんなの」と話し始めると徐々にヒートアップ。「大きな問題であるということを、本人がどのくらい理解している気持ちがあるのか。そんな気持ちがないなら、横綱としては失格ですよ。横審(横綱審議委員会)からも周りからも(名古屋場所の)相撲内容、立ち居振る舞い、横綱としては目を疑うという話をしているわけだから。常識、非常識が全くわかっていない。決められたことのルールを守ってない。ルール破りの常習だよ」とまくし立てた。

今回は横綱審議委員会から「見苦しい」と批判された、土俵上のプロレスまがいのかちあげや張り手ではない。五輪期間中に柔道会場の日本武道館に来場。親交のある男子73キロ級金メダルの大野将平(29)=旭化成=や、国際柔道連盟のマリウス・ビゼール会長(62)と一緒に納まった写真を同会長がツイッターに投稿したことで〝無許可観戦〟が明らかになったのだ。

東京五輪会場の原則無観客は政府の方針。白鵬は母国モンゴルのオリンピック委員会アンバサダーを務め、関係者として来場したとみられる。日本相撲協会は本場所初日の2週間前から原則外出禁止のルールを設けているが、場所後は緩和期間で、新型コロナウイルスのガイドラインに抵触するかは「微妙」。しかし、芝田山広報部長は「行くなら申請書を出し、こちらで審査しなきゃいけない状況だ。政府からの要請なら別。単なるモンゴル選手団からの要請じゃダメでしょ」とキッパリと言い切り、断罪した。

芝田山広報部長の発言を聞く限りでは「情状酌量」の余地はなく、近いうちに何らかの処分発表か、状況説明が行われるものと思っていた。ところが、20日以上が過ぎ、東京五輪が閉幕したのに、日本相撲協会からの発表や説明は何ひとつない…。

大関の朝乃山(27)=高砂部屋=が外出禁止期間に接待を伴う飲食店に複数回出入りしたうえ、日本相撲協会の聞き取りに対して噓をついたなどとして、6場所の出場停止と50%の減給6カ月の懲戒処分を科されたのは今年6月。大関から陥落し、幕下以下に番付を下げる。昨年の8月には平幕の阿炎(あび)(27)=錣山部屋=が同じく接待を伴う飲食店に出入りした問題で3場所の出場停止と50%の減給5カ月の懲戒処分を科せられた。いずれも日本相撲協会の定める新型コロナウイルスのガイドライン違反だった。

朝乃山や阿炎に対しては問題が発覚すると即座に事情聴取→懲戒処分…なのに白鵬に対しては事情聴取したのかどうかさえも発表されていない。協会の幹部が「ダメでしょ。横綱失格」とまで言及したにもかかわらず…。行った先がキャバクラか、五輪会場かの違いがあるから? 相手が大関や平幕ではなく、6場所休場後の名古屋場所で15戦全勝で45度目の優勝を飾った大横綱だから…処分ができない? 白鵬に出場停止処分を下すと興行に響くからなのか…。いずれにせよ、喉元に小骨が刺さったような感覚はぬぐえない。

芝田山広報部長の振り上げた拳はどこに行ったのか…。そこは最低限、ちゃんと説明しないと、ますます白鵬の〝治外法権〟ぶりがエスカレートするような気がする。(特別記者)