「市役所の予算の使い方は人口増加を前提とした昭和の時代の考えでした。人口減少や少子高齢化に合わせた使い方に変えようとしたが、『これまでのやり方をなぜ変えないといけないのか』といわれました」
前例踏襲や変化に対する抵抗は、程度の差こそあれ終身雇用、年功序列の日本企業に共通する。組織の中の価値観と異なる多様な人が意思決定に加わることが重要だと考えた理由だ。
起業に信念、10年後に目標
もう一つ、起業には自分自身の強い信念もあった。
市長1期目の最初の3年間は、就任前に起きた「大津いじめ事件」の対応に力を注いだ。その後、市長就任の一番の動機だった「女性が自由に選択できる社会」も8年間で保育園など54園をつくって結果を出した。退任後はAI(人工知能)などの技術力で法務を効率化するリーガルテックに挑戦するつもりだった。
「起業したいとは思っていたが社長経験がある知人に『情熱があることをやったほうがいい』といわれました。本当に情熱を持っていることはと自問し、会社の中を変えたいと思った。市長は企業で働く人の悩みを聞き、会社の外の環境を整えることはできても、会社は変えられなかった」
「社会を変えたい」「よりよくしたい」という信念が感じられる。そして、これからの歩みを見据えてきっぱりといった。「市長はゴールではなくスタートだった」と。
「OnBoard」は、約10年後に一つの目標を置いている。
「経団連(日本経済団体連合会)が2030年を目標に『女性役員比率30%以上』を掲げています。現在2500人余り。あと1万人くらい足りない。しっかりコミットしようと考えています」