「搬送困難」第5波で深刻 大阪・自宅療養向け外来開始

救急搬送困難事案の対策などとして大阪府が導入した「入院患者待機ステーション」=4月(大阪府提供、一部画像処理しています)
救急搬送困難事案の対策などとして大阪府が導入した「入院患者待機ステーション」=4月(大阪府提供、一部画像処理しています)

新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大に伴い、患者の搬送先がすぐに決まらない「救急搬送困難事案」が全国で増加している。千葉県では自宅療養中の妊婦の搬送先が見つからず新生児が死亡。病床が逼迫(ひっぱく)し、コロナ患者に限らず適切な医療が受けられない恐れが出ている。こうした中、大阪府では全国に先駆けて導入した入院患者の一時待機所を再開して対応。20日には新たに自宅療養者向けの外来診療もスタートさせた。

6月21日から感染第5波に突入した大阪府。大阪市では感染拡大に比例するように救急搬送困難事案が増加し、市消防局によると、7月19~25日の1週間は前週から一気に100件以上増えて255件に。その後も7月26日~8月1日が235件▽同月2~8日が279件▽同9~15日が240件と高止まりしている。大阪市消防局の担当者は「(感染)第4波の轍(てつ)を踏まないことが重要だ。第5波への取り組みを徹底するしかない」と話す。

今年に入って市内で搬送困難事案が最も多かったのは、第4波の4月26日~5月2日の307件。4~5月は救急搬送が滞る事態が続発し、症状が悪化した自宅療養者の搬送に最長46時間53分を要したケースも出た。

総務省消防庁によると、搬送困難事案は今月15日までの1週間に全国52の消防で過去最多の計3361件と、6週連続で増加している。特に首都圏が深刻で、最も多い東京消防庁が1837件(前週から20%増)、横浜市消防局は354件(同33%増)、千葉市消防局は157件(同37%増)だ。

こうした中、大阪府では、患者の搬送先が決まるまで一時待機する「入院患者待機ステーション」について、大阪市内1カ所の運用を13日に再開した。

酸素吸入装置や血中酸素濃度を測るモニターなど救急車と同等の対応環境を整え、症状の悪化を防ぐ。政府が全国に整備する方向で調整に入った「酸素ステーション」に相当するもので、4~5月に同市内に2カ所(計18床)設置した際は84人の搬送につなげた。

さらに府は今月20日から、自宅療養者が保健所を通じて外来でコンピューター断層撮影(CT)検査や治療を受けられる取り組みを開始。症状が悪化する前に治療することで病床の逼迫を避けるのが目的で、これまで自宅療養者はオンライン診療や「かかりつけ医」の往診を受けるしかなかったが、この取り組みで直接診療を受けることができるようになった。府内約200のコロナ患者受け入れ病院のうち20カ所を「外来診療病院」に指定している。

消防行政に詳しい大阪市立大の木村義成准教授は「救急搬送が遅れることで、コロナに限らず他の緊急性の高い病気や事故の治療に遅れが生じる恐れがある」と指摘。「これ以上搬送者が増えれば消防組織は限界。患者の一時待機施設や民間救急の活用を進めるべきだ」と話している。