【話の肖像画】評論家・石平(59)(18)荒唐無稽「反日」本、黙っていられぬと執筆活動 - 産経ニュース

メインコンテンツ

話の肖像画

評論家・石平(59)(18)荒唐無稽「反日」本、黙っていられぬと執筆活動

評論家の石平氏
評論家の石平氏

(17)へ戻る

《天安門事件(1989年)以降の90年代初頭、中国は「反日」に舵(かじ)を切った。その時期に中国の官製メディアが「日本を貶(おとし)めるため」に発行したおびただしい書籍が残されている》


90年代初め、民間の研究機関の仕事でたびたび、中国へ行き、そのとき買い集めた「反日」本が残っているのですが、その内容たるや、ひどい、のひと言。事実無根の大ウソが書いてある。もちろん「反日」宣伝は昔からありました。でも、僕が青少年期に経験したのは、日本軍の愚かさや滑稽さを〝道化〟のように描いたものです。それが90年代以降、日中戦争中、日本軍が残虐非道な行為を繰り返し、中国人民を3500万人も虐殺した、とか、100万人の女性をレイプしたとか…日本への憎悪をあおり立てる過激な内容に変わったのです。

もうひとつの流れは「日本脅威論」「再侵略論」です。日本が軍備を増強し、再びわが国(中国)を侵略する野望を持っている、というものです。ある本は産経新聞の〝報道〟を名指しで批判しています。曰(いわ)く、日本の有力政治家が「日中再戦論」をブチ上げた…。日本人なら誰でもウソだと分かりますよ。自分の国を守ることすら危うい日本がヨソの国を攻める意図を持っているなんてありえないでしょう(苦笑)。

当時の中国に、民間の出版社はありませんから、いわゆる「官製メディア」が共産党政権の指示でやったことです。ウソも百回言えば…ではありませんが、新聞、放送、出版、学校教育など、あらゆる方法を使った徹底的な宣伝によって、かつて民主化運動を一緒にやった知人・友人らまで感情的な「反日」「愛国」に豹変(ひょうへん)してしまったことは先に述べた通りです。「日本はケシカラン」「許せない」と激しく感情をたかぶらせるのが、中国社会の一般的なムードになってしまいました。


《石平さんは危機感を抱く。日本で暮らし、日本人と接したことで、「本当の姿」を知ることができたからだ。一方で、中国共産党による〝洗脳〟も経験している…。どうしても反論したくなり、ウソを暴く本を書こう、と決意する》


もう黙ってはいられないと思いました。ただ、在籍していた研究機関は中国との仕事をしているので、そのままの身分では迷惑がかかる。だから、身辺整理をして、組織をやめてから書こうと思ったのです。

安定した毎月の収入が無くなってしまうので、簡単なことではありません。組織の長からも引き留められました。だけど僕は、2つの理由から、「どうしても書かなくてはならない」と思っていたのです。

ひとつは、民主化運動をやり、天安門事件を体験した人たちが、まるでその記憶を消すかのように変わったことが、どうしても容認できなかったこと。もうひとつは、日本への「愛着心」です。まだ、日本国籍を取る前だから、「愛国心」とは言いませんが、日本のことが歪曲(わいきょく)されて、憎しみの対象にされていることに憤りを感じていました。実情を知っている、ウソだと分かっている僕がせめて、日本人に向けて、発信しなくてはならないと考えました。


《思いのたけを詰め込んだ処女作『なぜ中国人は日本人を憎むのか』(PHP研究所)は2002(平成14)年に出された》 (聞き手 喜多由浩)

(19)へ進む