噴火に台風にコロナ…箱根は困難にどう立ち向かったか

大涌谷では家族連れやカップルなどが観光を楽しんでいた=8月、神奈川県箱根町
大涌谷では家族連れやカップルなどが観光を楽しんでいた=8月、神奈川県箱根町

希望者への新型コロナウイルスワクチン接種が道半ばのなか、全国の観光地は本来のようなにぎわいを取り戻せないまま、今年も稼ぎ時のはずの夏が過ぎようとしている。関東近郊で最も有名な温泉地の一つである神奈川県の箱根も同様だ。加えてこの地は近年、噴火や台風といった自然災害の〝波状攻撃〟にもさらされてきた。そんな危機に老舗温泉街はいかにして立ち向かってきたのか。関係者に話を聞いた。

踏んだり蹴ったり-。箱根がたどったここ数年の歩みを振り返ると、どうしてもそんな印象を抱かざるを得ない。迫力のある噴煙を眺めながら、地熱で蒸し上げられた「黒たまご」を頰張る。

すさまじい衝撃

そんな人気の観光スポットである箱根山の「大涌谷」で異変があったのは平成27年のことだ。4月に突然、火山性地震が相次ぐと、6月には水蒸気噴火も観測され、気象庁は一時、周辺を噴火警戒レベル3(入山規制)に引き上げる。

箱根山で噴火が起きるのは「記録が残る範囲では、このときが初めて」(同庁の担当者)。それだけに、関係者の間に走った衝撃はすさまじいものがあった。

大涌谷の半径約1キロは警戒区域に設定され、上空をゆく「箱根ロープウェイ」は運行停止に。そんな事態を受け、観光客数は年間で400万人近く減り、特に繁忙期に当たる夏場はレベル3の状態が続いたことで大幅な落ち込みとなった。

「箱根町は地区によって気候が異なるうえ、もともとは5つの町と村が合併してできた自治体。かつてはそれぞれがバラバラで集客活動を行っていた」と指摘するのは箱根町観光協会の佐藤守専務理事。しかし、火山活動の活発化に町の人々の危機感は高まり、結果として「オール箱根」で対処しようという機運が高まったという。

「冗談かと思った」

その後、火山活動が沈静化したことから、28年7月には規制が緩和されて観光客数は前年比12・6%増の1900万人台に回復。佐藤氏らは地区の代表と町役場の担当者、町内のホテル運営会社などと毎月、会議を重ねてよりよい観光地づくりの実現に向けて動き出していた。

しかし、令和元年5月に再び大涌谷の噴火警戒レベルが引き上げられ、暗雲が立ち込める。同年10月7日にレベル引き下げの発表があり、関係者には一時、安堵(あんど)の色が広まったが、5日後の12日には「過去最強クラス」と呼ばれた台風19号が関東地方を直撃。1千ミリを超える総雨量が箱根を襲い、箱根登山鉄道は橋げたが流されるなどして運行不能に陥った。