勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(292)

大売り出し ブーマー人気でスタンド満員…映った「夢」

約2メートルのブーマーパンにちょっぴり不安気なブーマー
約2メートルのブーマーパンにちょっぴり不安気なブーマー

ブーマー騒動は高知キャンプでも続いた。打撃練習でいきなり左翼へ160メートル級の柵越えを21発。打球は左翼場外の駐車場やプールにも届いた。これには球団が慌てた。

「ブーマーの打球がファンに当たってケガでもされたら大変だぞ」

「そう車に当たって壊れたり、運転している人に当たって事故でも起こされたら、えらいことになる」

というわけで、ブーマーの打球に約2億円の「賠償責任保険」が掛けられたのだ。打球が頭などに当たり、死亡したり大ケガをしたりした場合は最高で2億円。運転中の車に打球が当たり、それによって前を走っている車に追突、ケガをした場合なども対象となり、対物は1000万円。「向こう(大リーグ)では〝アイムソーリー〟で済むのに」とブーマーもバンプもびっくり。

この「保険騒動」が大きな話題を呼んだ。とくれば、この機に乗じてブーマーを一気に売り出すのが〝阪急魂〟というもの。その第1弾が「ブーマーパン」。身長と同じ2メートルの超特大のフランスパンを西宮球場の試合で場外ホームランが飛び出したらファンにプレゼントする―という企画だ。

パンを作るのは新阪急ホテルの製作部のコックさんたち。4人がかりで4時間。使う小麦粉は3キロ。普通のフランスパン80個分。「アンパンなら250個は作れる量」という。そして大変なのが出来上がったパンの運搬。これまた4人掛かりで折れないようにそっと球場に運び込む。

「すごいパンだ。誰が食べるの? えっ、ボクが場外ホーマーを打ったらプレゼントするって? おそらく1本も打てないよ」

初めてブーマーパンを見たブーマーは不安そう。気の優しい男なのだ。

球団の〝売り出し作戦〟はまだある。「ブーマーボール」だ。バレーボール大の野球ボールの中にぬいぐるみの可愛いブーマー人形が入っており、ホームランを打つたびにブーマーがスタンドに投げ入れる。するとボールがパクッと2つに割れて、中からVサインをしたブーマー人形が飛び出すというもの。

「ブーマー人気でスタンドは満員ですよ」。そのときの球団関係者の目には〝夢〟が映っていた。(敬称略)