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ICT活用で地域課題解決に貢献 東京電機大学大学院生ら 水田の水位を遠隔監視、見回り時間など短縮

長野県小谷村での実証実験。水がきれいで、センサーが水位を捉えにくいといった想定外の課題もあり、学ぶことが多かったという
長野県小谷村での実証実験。水がきれいで、センサーが水位を捉えにくいといった想定外の課題もあり、学ぶことが多かったという

学問やICT(情報通信技術)の利便性を地域課題解決に活用する-。東京電機大学(東京都足立区)の大学院生らが独自のICTプラットフォームを開発し、8月から提供を開始した。ターゲットは人材不足に悩む小規模自治体。データを集積することで、水田の水位監視などの効率化を図る。大学発ならではの柔軟なアイデアをいかし、地域ニーズに合ったサービスを模索している。

1水田の水位監視効率化

日本IBMと開発したICTプラットフォーム『アナスタシア』を提供するのは、エクスポリス合同会社(同千代田区)の西垣一馬社長。同大学院情報環境学研究科(修士課程)の学生でもある。

アナスタシアが担うのは情報分析機能。高精度センサーを使用し、各種データを集積することで課題を把握する。その後、データ活用を促進し、自治体や企業の仕組みと連携させ、課題解決につなげていく。

エクスポリス合同会社・西垣一馬社長
エクスポリス合同会社・西垣一馬社長

西垣社長は「自治体のデジタル化、DX(デジタルトランスフォーメーション)が注目される。しかし、小規模自治体の場合、『どうすればいいの?』という声も多い。情報活用によって、必要なものを必要なだけ提供できるサービスを目指す」と意気込む。

西垣社長らは昨年4月から約半年間、長野県小谷村でアナスタシアの実証実験を行った。棚田にセンサーを設置し、水位を記録した。その結果、水位監視のための見回り時間を1日約30分削減できた。気象データと組み合わせ、いもち病や台風時の水田管理の危険回避予測にもつながった。

1農作物の被害対策にも

鳥獣による農作物被害の見回りにも応用した。わなにセンサーをつけ、鳥獣の移動を可視化。足跡を追いながら効率的に動くことができ、見回り時間を約1時間短縮した。西垣社長は「猟友会の方々の経験にデータを加え、次の一手を確実に実施できるようになるはず」と指摘する。

今後は環境や防災、交通など、幅広い分野での応用を想定している。現在は、さいたま市で経済産業省などが提供する地域経済分析システム(RESAS)と連動させ、健康分野での実証実験を実施している。

東京電機大学の松井加奈絵准教授
東京電機大学の松井加奈絵准教授

指導した同大システムデザイン工学部の松井加奈絵准教授は「大学発の起業としては後発。しかし、大学が技術ファーストで実学を尊重していくことに変わりはない。双方向性を大切に研究を社会課題に結び付けていきたい」と話している。


■友人からの一言 誕生のきっかけに

「水門を開けたり締めたり、水管理が大変なんだよ…」。稲作に携わっていた友人の河西達彦さん(当時同大情報環境学部3年)の一言がアナスタシアの誕生につながった。平成30年に2人で応募した『Sigfoxで生活を楽しくするIoTアイデアコンテスト』で優秀賞を受賞。水田の水位を低コストで遠隔監視できるシステムを考えた。

高校時代、時間割管理システムを開発すると、友人らに「便利だね」と声をかけられた。アイデアが人を動かすうれしさを知った。

「学びを通して社会と関わり、人が着手していない分野で、多くの人が使ってくれるものを作っていきたい」と話している。