米、デルタ株がV字回復見通しに陰 7月小売り売上高マイナス 問われる成長の持続力

新型コロナウイルスのデルタ株が流行する米国で、ワクチン接種を完了した人も屋内でマスクを着用するよう呼び掛けるポスター=2日、ニューヨーク市(ロイター)
新型コロナウイルスのデルタ株が流行する米国で、ワクチン接種を完了した人も屋内でマスクを着用するよう呼び掛けるポスター=2日、ニューヨーク市(ロイター)

【ワシントン=塩原永久】米国で新型コロナウイルスのデルタ株が流行し、好調な景気の見通しに影が差し始めた。経済成長率は年初から6%超が続くが、17日発表の7月の小売売上高は2カ月ぶりにマイナスに転じ、経済情勢の変調を警戒して同日の米株式相場は大きく下落した。ワクチン接種にいち早く取り組み、在宅勤務の浸透などで景気のV字回復が視野に入っていた米国経済の持続力が問われる情勢だ。

米商務省が発表した7月の小売売上高(速報値、季節調整済み)は、前月比1・1%減だった。下落率が市場予想のマイナス0・3%程度を大幅に超え、景気回復の息切れに対する懸念が浮上。17日のニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は、一時500ドル超の下げ幅となった。

米実質国内総生産(GDP)は4~6月期に年率換算で前期比6・5%増となり、1~3月期の6・3%増から加速した。ただし、米経済の約7割を占める個人消費をめぐっては、8月の消費者信頼感指数が約10年ぶりの低水準に下落。ロイター通信によると、調査担当者は「感染症危機が近く終息するとの期待を(デルタ株が)打ち砕いた」との分析を示す。

米国では1日当たり新規感染者数が7月初旬には1万人台だったが、下旬以降は10万人を超える日が続出。デルタ株が感染者の8割以上を占めるとされる。流行再加速の温床となっていると指摘されるのがワクチン未接種者だ。米国は昨年12月からワクチン接種を急ピッチで進め、営業規制や外出制限を縮小してきたが、現状では接種を完全に終えた人の割合は50%程度で伸び悩んでいる。

今後の経済活動については、社会が在宅勤務などの感染症に適応する術を学んできたことなどから、1年前のロックダウン(都市封鎖)のような厳格な対策がただちに広がるとの見方は、今のところ少ない。

ただ、デルタ株拡大を受け、米IT大手のグーグルやアマゾン・コムが9月に予定した出社再開を延期。ニューヨーク市がデルタ株対策として、飲食店や娯楽施設など屋内施設の従業員や利用客に、ワクチン接種証明の提示を9月中旬以降に義務付けるなど、企業や商業活動への影響も出始めている。金融市場では「さらなる感染拡大は景気回復の足かせになる」(米銀エコノミスト)と警戒感が強まっている。