タリバン統治で過激派伸張の恐れ アルカーイダと親密

銃を持ったタリバン戦闘員=16日、カブール(ゲッティ=共同)
銃を持ったタリバン戦闘員=16日、カブール(ゲッティ=共同)

【カイロ=佐藤貴生、シンガポール=森浩】アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンが権力を掌握したことで、同国が再びイスラム過激派の温床になるとの警戒感が広がっている。特にタリバンと関係が深い国際テロ組織アルカーイダの伸長が懸念される。今後、欧米諸国による各組織の情報収集が困難さを増すのは必至とみられ、水面下で過激派が伸長する事態もあり得る。

「アフガン国土は誰にも使わせない」。17日の記者会見でタリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官はアフガンが他のイスラム過激派の活動拠点となる可能性を否定した。

しかし、国際社会では懐疑的な見方が大勢だ。アフガンではタリバンやアルカーイダ、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が活動する。北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長はタリバンに「国際テロ組織が足場を広げないよう保証する責任がある」と求めた。

タリバンは1990年代、アルカーイダ指導者のウサマ・ビンラーディン容疑者を「賓客」として迎え入れ、原理主義化が進んだ。2001年の米中枢同時テロ後、米国が求めた同容疑者の身柄引き渡しを拒んだことで、約20年続くアフガン戦争が始まった。

アルカーイダの現指導者のアイマン・ザワヒリ容疑者は、16年にタリバンの指導者になったハイバトゥラ・アクンザダ師を祝福。ザワヒリ容疑者と個人的に関係を持つタリバン幹部もいるとされる。

英BBC放送は今月17日、アフガン東部クナール州に最大500人のアルカーイダ構成員がおり、「(タリバンの政権樹立で)増える可能性がある」との識者の見解を伝えた。

アフガンで過激派間の闘争が激化する恐れもある。ISはアルカーイダ系から分裂した組織で、ザワヒリ容疑者は14年、ISとの関係断絶を表明した。タリバンはISがタリバン構成員を勧誘して勢力を拡大したため、IS掃討作戦を展開したこともある。

ISはタリバンとアルカーイダを「偽善者」と見なしている。インドのシンクタンク、オブザーバー研究財団の調査(今年1月発表)によると、ISは米国と和平協議を行ったタリバンを「ジハード(聖戦)から背教」したと見ており、アルカーイダにも批判を加えている。

各組織が離合集散する可能性もあるが、動向把握は困難となりそうだ。欧米諸国がアフガンで各組織の実態を把握する際、アフガン政府の情報機関「国家保安局」が協力してきたが、タリバンにより解体か組織改編される可能性がある。タリバンは報道の自由にも制限を加える可能性が高い。外部による有効な監視体制の構築が求められている。

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