繰り返される場当たり対応 宣言拡大と延長に戦略なし

発令中の緊急事態宣言等の期間延長と地域拡大の決定について表明する菅義偉首相(手前から2人目)=17日午後、首相官邸(春名中撮影)
発令中の緊急事態宣言等の期間延長と地域拡大の決定について表明する菅義偉首相(手前から2人目)=17日午後、首相官邸(春名中撮影)

政府は新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言をめぐり、対象拡大と期限延長を余儀なくされた。ただ、新規感染者数をピークアウトさせるのは困難との見方は強く、今回の眼目は重症者数を抑制し、「医療崩壊」を阻止することにある。もっとも、重症者数は新規感染者数を後追いする形で増えていくため、増加は当面続くことが予想される。展望が見通せないまま、時間だけが過ぎている。

「ワクチンと医療体制の充実しかないんだよな」

重苦しい空気が包み込む中、菅義偉首相は16日夕の関係閣僚との協議でそうつぶやいた。当初の期限は31日。早々と対象拡大と期限延長を決めたことは、事態が日々悪化していることを裏付けている。

協議では全国への適用を求める意見も出たが、「どうやって解除するんだ」という声にかき消された。ただ、首都圏だけでも9月12日に解除できる見通しは立っておらず、早くも再延長論がくすぶる。

そんな中、ワクチン接種の進展を背景に、新規感染者数よりも、むしろ重症者数を抑えることに軸足を置き、コロナと共存する方向にかじを切るべきだとの声が政府内に強まっている。感染力の強いインド由来の変異株(デルタ株)の登場で局面は変わった。解除の目安となるステージ別指標の見直しは急務だ。

もっとも、重症者数も増加傾向にあり、厚生労働省によると今月16日時点で1646人と5日連続、最多を更新。基本的対処方針分科会の尾身茂会長は17日の分科会後、記者団に「医療機関に協力してもらえる法的な新たな仕組みの構築や、感染症法など現行の法律の活用をしっかりやってほしい」と法整備の必要性に言及した。

最後のとりでは治療薬だろう。厚労省は重症化を防ぐ効果がある軽症・中等症向けの「抗体カクテル療法」を宿泊療養施設で使用することは認めたが、経過観察が必要な上、点滴薬でもあるため、自宅での投与を認めていない。関係閣僚は「抗ウイルス剤の経口薬が実用化すれば状況は変わる」と期待を寄せるが、まだ先の話だ。

ワクチンが国民に行き届き、軽症者向けの経口薬が実用化するまでの間、各地域に対し宣言や蔓延防止等重点措置の適用、解除、期限延長を繰り返す-。そんな場当たり的な対応では国民から理解は得られず、そこに戦略も見当たらない。(坂井広志)