主張

GDPプラス 下押し回避へ対策尽くせ

4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値が年率換算で1・3%増となり、2四半期ぶりのプラス成長となった。

海外経済の拡大が、主として製造業の業況を改善させたことなどが要因だが、それでも新型コロナウイルス禍の影響で、経済全体には勢いがみられないままである。

むしろ、ワクチン接種が早かった欧米などと比べて、日本の景気回復はいかにも遅く、弱いことが心配だ。足元の感染拡大が経済をさらに下押しする懸念もある。

ワクチン接種を急ぐことは、感染拡大や医療の逼迫(ひっぱく)を抑制するだけでなく、経済活動を再開する上でも有効だ。接種が広く行き渡る前に、景気が息切れするような事態は避けなくてはならない。

長引く経済活動の自粛で瀬戸際の経営が続く中小・零細企業や個人事業主は多い。厳しい暮らしから抜け出せない非正規労働者もいる。政府はこうした人たちへの支援で万全を尽くしてきたのか。

コロナ対策で膨らんだ令和2年度予算のうち、3年度への繰越金は30兆円を超える。迅速かつ十分な支援が届いていないなら、これを改める効果的なコロナ対策を早急に講じるべきである。

個人消費は前期比0・8%増だった。4~6月期は、前期と同様に緊急事態宣言などで経済活動が制限された。それでもわずかに伸びたのは巣ごもり需要などが浸透したためだろう。もっとも、自粛疲れが広がり、宣言の人流抑制効果が限定的になったことが消費悪化に一定の歯止めをかけたのなら皮肉な結果というほかない。

経営環境が二極化する傾向はさらに顕著となっている。観光業や外食、陸運、空運などの非製造業が苦境の最中にある一方、欧米や中国経済に後押しされた製造業には好調な企業が多い。上場企業の4~6月期決算は、自動車や電機などを中心に収益が回復した。

もちろん、頼みの海外でも再び感染拡大が懸念されつつある。原材料価格が高騰する懸念もある。こうしたリスクへの備えは大切だが、収益が大きく改善した企業には新たな設備投資を検討するなど前向きな経営を目指してほしい。感染力の強いデルタ株(変異株)の蔓延(まんえん)が経済の先行きをさらに不透明にしている。だからといって手をこまねいていても仕方がない。官民ともにできることは全て行うべきときである。

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