勇者の物語~「虎番疾風録」番外編~田所龍一(290)

ブーマー見参 上田監督興奮「文句なしで4番」

お披露目で首脳陣の度肝を抜いたブーマー
お披露目で首脳陣の度肝を抜いたブーマー

■勇者の物語(289)

〝ブームを呼ぶ男〟ブーマー・ウエルズが昭和58年2月5日午後6時35分、大阪国際空港着のJAL51便で来日した。

「私が手を伸ばしても届かんわ」。身長200センチ、体重100キロ、胸囲118センチ、太もも64センチ。エアポートホテルで出迎えた156センチの岡田球団代表は巨漢ブーマーにビックリ。いや、驚かせたのは体格だけではない。翌6日、西宮第2球場で行われた〝初打ち〟でブーマーは首脳陣や選手たちの度肝を抜いた。

打撃ケージに入ったブーマーを上田監督はじめ首脳陣が見つめる。内外野にはレギュラー陣が守備に就いた。

1球目、快音を発した打球は三塁・松永へのライナー、と思ったら「バシッ」とグラブを弾き飛ばして左翼前へ。「オオゥ」という声が起こる。

◆証言1(松永)「守るのが恐ろしいよ。何を食べたらあんなにデカくなるの?」

5球目頃から打球が上がり始める。ポンポンとホームラン級の打球が飛ぶ。そして11球目、フルスイングしたバットから「キーン」という金属音が発した。会心の当たり。打球は左翼93メートルに民家に当たらぬようにと建てられた高さ15メートルの防御ネットの上部にライナーで突き刺さった。突き刺さったとはオーバーな? いや、本当にボールが金網に突き刺さって落ちてこなかったのである。

◆証言2(水谷)「アカン、負けた。スケールが違う。一塁はブーマーに渡す。オレは外野に挑戦する」

◆証言3(福本)「ごっついなぁ。1死満塁でブーマー、敬遠やな」

この年からサンケイスポーツの評論家に就任した長池徳士も絶賛した。

「フォームにもクセがなく、肩も突っ込まない。低めも打てる。いや、むしろ高めが得意のようや。4番? 当然やろ。守備もグラブさばきはええし、内野陣はマトが大きいから投げやすい。いい買い物したと思うよ」

上田監督は興奮気味。

「間違いなく本物や。年がいもなく興奮した。文句なしで4番決定。これでやれる―という勇気が湧いてきたで」

第2球場はもうお祭り騒ぎだ。そんな中、ブーマーはなぜか「ボク、まだ本調子じゃない。久々だから…。ごめんなさい」と、しきりに謝っていた。(敬称略)

■勇者の物語(291)