遺志継ぐ者いるか タリバンに屈しなかった「英雄」

暗殺されたマスード司令官の遺影を掲げ、タリバン壊滅を誓う演習中の民兵ら=2001年11月(佐藤貴生撮影)
暗殺されたマスード司令官の遺影を掲げ、タリバン壊滅を誓う演習中の民兵ら=2001年11月(佐藤貴生撮影)

2001年11月、アフガニスタンのイスラム原理主義勢力タリバンが米軍の空爆を受け、首都カブールから敗走した。その直後にカブールに入り、理髪店でひげをそる男性や、全身を覆うブルカと呼ばれる服を脱いだ女性が学校で学ぶ姿を目の当たりにした。タリバンの禁じた行為が誰はばかることなくできるようになり、カブールは自由をかみしめる人々の喜びに満ちていた。それから20年。笑顔は再びかき消された。(中東支局長 佐藤貴生)

米政府がアフガン駐留米軍の撤収を発表した4月、攻勢を強めたタリバンは国内各地を制圧。ガニ大統領が今月15日に国外退去し、カブールは事実上陥落した。

タリバンの報道官は最近、英BBC放送に「私たちは国民の召使いだ」と訴え、報道の自由や女性が教育を受け、労働する権利を守ると述べた。しかし、この言葉は額面通りに受け取るべきではない。

タリバンはいま、各地で強制的に結婚させるため独身女性を連れ出したり、学校や職場への女性の立ち入りを禁じたりしていると伝えられる。カタールの衛星テレビ局アルジャジーラの映像によると、タリバンが占拠したカブールの大統領府内では、タリバン幹部の周囲に自動小銃を持った者たちが立ち並んでいた。

暴力と恐怖に基づく統治を行う可能性を示すものといえ、報道官の言葉には国内外の警戒心を解く狙いがうかがえる。

イスラム教の聖典コーランには泥棒がいたら手を切り落とし、不倫をした男女にはむち打ちの刑を科すよう命じる文章がある。イスラム神学生を中心に1994年に結成されたタリバンは、犯罪者とみなした者にむち打ちや公開処刑を行ってきた。原理主義組織として存在意義が問われるような統治手法の転換は考えにくい。