北朝鮮相手取り帰国事業で損賠訴訟、10月に初弁論

東京地裁が入る建物(今野顕撮影)
東京地裁が入る建物(今野顕撮影)

北朝鮮帰国事業で人権を侵害されたとして日本への脱北者5人が北朝鮮政府を相手取り計5億円の損害賠償を求めた訴訟をめぐり、東京地裁は16日、第1回口頭弁論を10月14日に開くと決めた。弁護団によると北朝鮮政府を相手取った訴訟は初めてという。北朝鮮とは外交関係がなく、裁判所の掲示板に一定期間、関係書類を公示することで相手に届いたとみなす「公示送達」の手続きを取った。

北朝鮮は昭和34~59年、「地上の楽園」と宣伝して在日朝鮮・韓国人と日本人配偶者ら家族の北朝鮮への集団的移住・定住を推進。日本政府も協力し、日本国籍者を含む9万3千人以上が渡航したとされる。

訴状などによると、虚偽の宣伝にだまされて渡航した原告らは長期間にわたって出国を許されず人権を抑圧されたほか、現在も北朝鮮に残された家族の出国が許されず、面会できないままになっている。

民事訴訟法では、日本の裁判所が国際裁判の管轄を持つのは不法行為が日本であった場合とされている。弁護団は「虚偽宣伝は日本国内で行われており、日本の裁判所で争える」などとして平成30年8月に提訴。これまでに地裁との間で進行協議を6回重ねてきた。

地裁前で取材に応じた原告の一人、川崎栄子さんは「やっとここまでたどりついた。(家族に)一日でも早く会うための努力をしていきたい」と、涙を浮かべて訴えた。

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