美村里江のミゴコロ

荷物の下の恐るべき物体

コロナ禍以前からネットショッピングを重宝している。休みが定まらない職業なので、いつでも買い物できるのは本当に助かる。

運輸業が逼迫(ひっぱく)しているというニュースを読んで以降、なるべく配送はまとめるようにしているが、食品から書籍から針1本に至るまで…。とてつもない数の品物を、よくぞここまで短時間で送ってくださると毎度ありがたい思いだ。

しかしシステムの改変の関係か、誤発送の多かった時期があった。利用頻度の高い方は思い当たるかもしれない。買い物履歴に存在しない物が送られてきて、返品することが何度か続いた。その中でもとびきりだった誤発送事件。

ロバート・ロドリゲスやクエンティン・タランティーノによるアンソロジー映画「グラインドハウス」を観賞し直した、数年前の8月のことだった。

グラインドハウスとは、B級映画などをまとめて安く観賞できる映画館のことである。そんな映画館で流れる、このためだけに作った「ニセの予告編」5本と本編2本のDVDだ。

基本的に映画はなんでも楽しく見るが、このニセ予告編のコテコテに作られた「それっぽさ」が笑え、うまいなあと監督たちの遊び心に癒やされる。多分、映像制作に関わっている人間は余計に楽しめる作品で、見返す度に笑える娯楽作である。

なかでもバイオレンスアクション「マチェーテ」は、両手に刃物を構える主演のダニー・トレホの風貌が秀逸だ(実は10年以上構想をあたためていたという作品で、3年後には実際に製作・公開)。グラインドハウス観賞後は、「マ・シェテ~」とネーティブなタイトルコールをまねる遊び(?)がわが家でも流行するのだった。

そんなマチェーテごっこ冷めやらぬ数日後、注文していた商品が届いた。10冊ほどの書籍とDVD数枚、そして近所に売っていないお気に入りの歯ブラシ。その下に、半透明の鞘(さや)に収まった大きな刃物が…。

鉈(なた)=マチェーテ。「ああぁ~」と変な声が出て、「どうしたの」と心配顔の夫に鉈を掲げて見せ、2人で「…うそ~!」と仰(の)け反った。

私は奇遇の多い人生との自覚があるが、理系の夫も「いやあ、コレは確率を超越したね」と大笑い。即返品したが、8月になると思い出す。誤発送のおかげでオチの付いた一件だった。