アフガニスタンでイスラム原理主義勢力タリバンが米国を後ろ盾としてきたガニ政権を打倒し、実権を掌握したことは、発足から半年が過ぎたバイデン米政権にとって最大の外交・安全保障分野における失態となった。タリバンが全土支配をほぼ実現させたことで、アフガンが再び米本土への攻撃も含めた「テロの温床」と化す公算は大きい。バイデン政権は、中国やロシアといった専制体制との競争に加え、次なる「テロとの戦い」への備えという「多正面作戦」を迫られるのは必至だ。(ワシントン支局長 黒瀬悦成)
駐留米軍のアフガン完全撤収の方針は昨年2月、トランプ前政権がタリバンと合意したものだ。バイデン大統領がこれを踏襲したのは、米国が過去20年間に2兆ドル(約218兆円)以上の戦費などを投入し、2400人以上の米兵の犠牲を出したにもかかわらず、アフガンの安定化を実現できず、今後も実現できる見通しはないとして、アフガン関与に「見切り」をつける判断を下したためだ。
だが、アフガンの将来を同国政府に託すというバイデン氏の判断は、米軍撤収後のアフガンの安全を担うはずだった同国治安部隊の実力を過大評価していた時点で、早晩破綻することは明白だった。