地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化・伝統を語るストーリーとして文化庁が認定する「日本遺産」の一つ「北前船寄港地」を広くPRしようと、青森県では鯵ケ沢、深浦、野辺地の3町が今年度から連携事業を始めた。日本遺産の趣旨そのままに、日本の海運を支えた北前船の歴史、荒波を越えた男たちの物語を知ってほしいという。
加護祈った船乗りの髷
北前船は、江戸時代中期から明治30年代にかけて大阪と北海道を日本海回りで商品を売買しながら航行し、経済の大動脈としての役目を果たした。3町には当時の船絵馬や北前船によって運ばれてきた石造物、祭りなどが脈々と受け継がれている。
古くから海運の要衝として栄えた深浦町の円覚寺は、航海の安全を願う北前船の商人や船乗りたちの信仰を集めた。中でも珍しいのは、本物の髷(まげ)が残る「髷額」。船乗りたちが嵐に遭遇すると無事を願ってちょんまげを切り落としてご加護を祈り、無事に生還したお礼参りとして同寺に奉納されたとされる。
江戸時代、盛岡藩有数の商港として多くの北前船でにぎわった野辺地町。夜間も船が安全に航行できるよう建立された「常夜燈」と、北前船の技術や歴史を後世に伝える願いを込めて建造された復元船「みちのく丸」(全長32メートル、全幅8・5メートル、帆柱高28メートル)がシンボル的存在だ。
鯵ケ沢町には北前船によってもたらされたとされる「白八幡宮大祭」が伝わる。340年以上の歴史があり「津軽の京祭り」とも称される。4年に一度、8月に行われるが、今年は新型コロナウイルスの影響で延期された。同町教育委員会の中田書矢総括学芸員は「長年、町民が関わって伝承してきた祭り。来年こそ開催したい」と話す。