「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記

短期集中連載『闘将が虎を抱きしめた夜』役員会全員反対! 魂はタイガースに残り、今も息づいていると信じたい

日本シリーズ後に辞任することになった星野仙一監督へのメッセージをかかげる阪神ファン=2003年
日本シリーズ後に辞任することになった星野仙一監督へのメッセージをかかげる阪神ファン=2003年

今ここで、再び闘将・星野仙一を語りたい-。東京五輪で中断されたプロ野球のペナントレースは13日に再開した。16年ぶりのリーグ優勝を目指す矢野阪神は残り59試合に全てを賭ける。18年前の2003年9月15日、チームの大改革に成功した星野仙一監督は甲子園球場の夜空に7度、舞った。球団本部の戦力編成権を〝奪い取った〟闘将は遮二無二「勝ちたいんや!」とほえ、ファンの心もわしづかみにした。結果として2年で退任する要因となったが…。しかし、闘将の残した成功体験はその後のタイガースのチームづくりや球団経営へのスタンスに大きな〝遺産〟を残した。最終章の第6話は「役員会で全員反対! 闘将の魂はタイガースに残り、今も息づいていると信じたい」-。

〝恋心〟が冷めたかのような言動

甲子園球場の夜空に7度、背番号77は舞った。両手を広げ、両足を投げだし、闘将は選手に体を委ねた。ファンが歓喜の涙を流したのは03年9月15日の夜だった。監督就任1年目のシーズン途中から球団本部の〝弱体〟ぶりを察知すると、自ら戦力補強に乗り出した。負け犬根性の一掃と戦力経費の削減のため、24人の選手を退団させた。チームを大改革し、就任2年目の03年はシーズン開幕から「勝ちたいんや!」とほえた。選手やファンに強く優勝を意識させ、結末は最高の美酒だった。

ところが、優勝へのカウントダウンが進む中、舞台裏は風雲急を告げていた。01年の晩夏、野村克也監督の退任が不可避となった状況で、「星野さんは願ってもない人」と監督就任を懇願した久万俊二郎オーナーは〝恋心〟が冷めたかような言動を始めた。感性の鋭い闘将が見逃すはずがない。暑い夏の日のオーナー宅での会話を書く。

「オーナーのご発言は少し気がかりです。監督が『辞める』と言い出したらどうします」

「辞めると言うなら全力で慰留します。ただ、あなた、星野さんに聞いてきてください。この先も阪神タイガースに無償の忠誠心を誓えますか?…と」

「どうしてですか」

「ウチは読売ジャイアンツではない。巨人のようには(球団経営は)いきません。そういうことです」

晩夏の芦屋の喫茶店、星野監督にオーナーの言葉をそのまま伝えた。あの時の闘将の顔は終生忘れない。

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