【ソウル=桜井紀雄】韓国で日本統治からの解放を記念する「光復節」の15日、政府式典が旧ソウル駅舎で開かれた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は任期最後となる光復節での演説で、日本に対して「対話の扉を常に開いている」と強調し、両国間の懸案や新型コロナウイルス禍などへの共同対応に向けた協力を呼び掛けた。
いわゆる徴用工や慰安婦訴訟を念頭に、歴史問題については「国際社会の普遍的な価値と基準に沿った行動と実践で解決していく」と述べた。文氏は14日の慰安婦問題の記念日にも「『被害者中心の問題解決』という国際社会の規範を守る」と説明しており、元徴用工や元慰安婦側の納得を前提にしているもようだ。
文氏は、日韓が知恵を集め、困難を共に克服しつつ、「隣国としてふさわしい協力の模範を示せることを期待する」とも表明した。ただ、徴用工訴訟などへの具体的な解決策は示さなかった。文氏は東京五輪に合わせた訪日と対面での菅義偉(すが・よしひで)首相との初会談を目指しながら、直前に取りやめており、本格的な対話の糸口もつかめていない。
北朝鮮に対しては「南北が共存し、朝鮮半島の非核化と恒久的平和を通じて北東アジアの繁栄に寄与する『朝鮮半島モデル』をつくれる」と指摘。「朝鮮半島平和を強固に制度化すること」が南北双方の大きな利益となると主張した。北朝鮮が16日から本演習に入る米韓合同軍事演習に強く反発し、関係が再度冷え込む中、北朝鮮に向けた新たな提案はなかった。