スマートシティ計画が“スマート”には進まなかった都市の教訓

そして、5,000万ドル(連邦政府が4,000万ドル、マイクロソフト共同創業者の故ポール・アレンが立ち上げた投資会社が1,000万ドルを出資)という資金についてミラーは、そこまで多額のものではないとも言う。5年間に分散すればなおさらだろう。それに、「自律走行車の時代が差し迫っていることは間違いない」と業界が大げさに騒ぎ立てたことについては、コロンバス市に責任はない。

「コロンバス市は結局、革命的なアイデアを実験したことになったのだと思います」と、ミラーは言う。「コロンバス市はその過程で、何がうまくいき、何がうまくいかないのか、多くを学んだのだと思います」

コロンバス市がうまくいったことに挙げたのは、パンデミックの発生後に自動運転シャトルバスをフードバンクの配送車両へと転用したことだった。この自動運転シャトルバスは20年夏から21年春にかけて、月に500箱もの食料を市内のフードパントリー(配給センター)に配達し、窮状にある人たちを支援した(配達中は自動運転技術の監視と安全確保を担う乗員が常に乗車していた)。

また、認知障害をもつコロンバス市民27人がアプリを試験ダウンロードし、公共交通機関の利用時に役立てた。その後の調査では、70%の人がアプリに「満足した」と回答している。

さらに、妊婦70人がUber型の配車サービスアプリを試験利用して、医師の診察を受けるために外出した。このオンデマンド配車サービスを利用しなかった対照群と比較すると、利用した妊婦のほうが病院や薬局、食料品店に足を運んだ頻度が多かったという。報告書では、配車サービスを利用しただけで出産の安全性や健康な赤ちゃんが生まれる確率が上昇するわけではないが、「価値ある貢献になりうる」と書かれている。

プロジェクトのこれから

スマートシティ・チャレンジを機に始まったプロジェクト8件のうち5件は、今後も継続される。例えば、官民がデータを共有できる市内全域の「オペレーティングシステム」や、街頭に設置されるスマートな情報端末、駐車場を予約したり移動手段を計画したりできるアプリなどだ。

またスマート・コロンバスは、ブロードバンド接続をもたない住民へのサービス提供にも力を入れていく。そうした格差はパンデミック中にいっそう深刻化したのだと、市当局は指摘する。

スマート・コロンバスのディレクターのデイヴィスは、スマートシティ・チャレンジには制約があり、コミュニティが真に必要としているニーズを中心にプロジェクトを構築することが難しい場合もあったと認めている。計画は5年前に立案され、そこから逸脱しようにも限度があったのだ。

コロンバス市は将来的に、「民間企業が開発したとてもクールなテクノロジーを導入しよう」という考えではなく、「思いやりをもって積極的に関与する」姿勢を強めていくだろうと、デイヴィスは語っている。




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