15日で終戦から76年。戦争体験者らは高齢化し、記憶の継承は年々難しくなっている。元軍人や遺族つくる戦友会でも同じだ。「史実を知ることが平和につながる」と、SNS(会員制交流サイト)で肉声や記憶を伝える組織も出てきた。活動が功を奏し、会員数を伸ばした戦友会もある。
「自己犠牲することは苦しいけど、納得して『棺』となる自分の飛行機に乗るという考えでおりました」。2年前に96歳で死去した元特攻隊員、江名武彦さんが動画投稿サイト「ユーチューブ」で語る。特攻作戦や当時の心境を明かし、「戦友を思うと彼らの鎮魂と慰霊に一生を尽くさなければいけない」と話した。
元特攻隊員や遺族らでつくる「特攻隊戦没者慰霊顕彰会」(東京)が、数年前に行ったインタビューを昨年、投稿した。今後も投稿を続け、次世代への記憶の共有を模索する。
顕彰会の石井光政事務局長(70)は「特攻について中身まで知る若者は少ない。存命の当事者がほとんどいない中、動画を通じて肉声を伝える使命感があった」と言う。
顕彰会はピーク時には約3700人の会員がいたが、現在は約1400人に減少した。存命する元隊員らは一人また一人と鬼籍に入っていく。20歳前後で戦場に散った特攻隊員は未婚だった人が多かったことも、継承のハードルになっている。
「若い世代が『利他の精神』で亡くなっていった英霊たちのことを、完璧に理解することは難しいと思う。動画でその一端に触れ、少しでも思いをはせてもらえれば」。石井事務局長はそう話した。
先の大戦の激戦地、南太平洋・ソロモン諸島での戦闘に従事した軍人や遺族の戦友会「全国ソロモン会」は、約10年前からSNSでの情報発信を続けてきた。
ツイッターやインスタグラムで遺骨収集などの活動を紹介したところ、この5年間で20~30代の若い世代を中心に新たに約50人が入会した。祖父や曽祖父が当事者だった人もいるが「戦地で何があったかを学びたい」と、入会を決めた若者も少なくないという。
全国ソロモン会では昨年までに、戦地を知る会員が全員亡くなった。若い世代との接点を持つ意義は、今まで以上に大きくなっている。発信する情報がソロモン諸島の風景や市場の様子など多岐にわたるのは、「敷居が高い」と思わせないための工夫だ。
同会の崎津寛光(かんこう)事務局長(49)はこう話す。
「世代交代のときが来てしまったが、史実を知ってもらい平和につなげることが戦友会の役目。英霊たちの存在が、今日の日本につながっているということを知ってもらいたい」(石橋明日佳)