【鑑賞眼】歌舞伎座「八月花形歌舞伎」 代役、抜擢…若手が奮闘(1/2ページ) - 産経ニュース

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鑑賞眼

歌舞伎座「八月花形歌舞伎」 代役、抜擢…若手が奮闘

8月の歌舞伎座といえば、亡き中村勘三郎と坂東三津五郎が軸となる「納涼歌舞伎」が恒例で、歌舞伎ファンは夏、肩の凝らない演目を楽しむのが常だった。コロナ禍で興行形態が変わり、「納涼歌舞伎」は2年連続お預けだが、「八月花形歌舞伎」として今月、若手が奮闘している。

3部制の今回、納涼歌舞伎の匂いが色濃く残るのが勘三郎の子息、勘九郎と七之助兄弟が中心となる第2部。夏らしく怪談話「真景累ヶ淵(しんけいかさねがふち) 豊志賀の死」で、〝チーム中村屋〟らしい一体感と、芝居のうまさで堪能させる。幕末から明治にかけ活躍した噺家(はなしか)、三遊亭円朝(1839~1900年)が江戸時代の説話を脚色し、さらに歌舞伎化された作品の一部だ。

顏に腫物ができて寝込む富本節(浄瑠璃の一流派)の師匠、豊志賀(七之助)を、けなげに看病する内弟子の新吉(中村鶴松)。2人は深い仲で、20歳若い新吉は、師匠の嫉妬やわがままにもよく耐えている。師匠が寝入った隙に、実は好意を寄せる娘、お久(中村児太郎)と会い、2人で家出を決意。すると燭台の火が消え、暗闇から師匠が現れる-。

元が落語だけに、怪談とはいえ笑いが満載だ。七之助は、お化けのような風貌で執念深い年増になり切り、若い男に恨みつらみを吐き、よよとすがりついてみせるが、この掛け合いが絶妙。受ける鶴松も大健闘で、行く先々でぬっと現れる師匠の霊に驚愕(きょうがく)し、狼狽(ろうばい)する様に何度も笑った。勘三郎の部屋子として、一般家庭から歌舞伎界入りした弟分の鶴松を、中村屋兄弟が「新吉役が合う」と大抜擢(ばってき)したのも納得だ。

噺家役の勘九郎は、円朝作品で円朝本人まで演じた蓄積がにじみ、緩急自在の話芸。かつて納涼歌舞伎で歌舞伎座を沸かせた今作が、若い世代で戻ってきたのもうれしい。