政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は12日、急速な感染拡大を受けた対策強化に関する提言をまとめ、今後2週間は東京都の人流について「7月前半の約5割にする必要がある」と求めた。百貨店の地下食品売り場(デパ地下)などの利用を控えるよう求めたほか、お盆の時期の帰省などを念頭に、県境を越える移動を自粛するよう呼びかけた。
分科会の尾身茂会長は12日の記者会見で、対策強化の対象地域について、新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言が発令されている6都府県と説明。西村康稔経済再生担当相は「強い危機感を共有し、各知事と連携して取り組んでいきたい」と記者団に述べた。
提言では、人流や感染リスクを減らすため、デパ地下やショッピングモールでの人出抑制、テレワーク強化、県境を越えた移動の自粛を訴えた。ただ、感染リスクが比較的低い場所として、観客が声を出さないコンサートや演劇▽映画館▽公園▽図書館や美術館-を挙げ、「感染防止を徹底した上で利用可能」とした。
医療提供体制に関しては「災害医療」の考え方に立ち、医療人材や宿泊療養施設の確保に向けて国・地方自治体の連携が必要と強調。コロナ対策にかかわってこなかった医療従事者や医療機関が「果たすべき役割」を果たすため、国・自治体に指導力を求めた。
一方、尾身氏は東京五輪が感染拡大に与えた直接的な影響は否定したが、「人流という意味で、五輪開催が人々の意識に与えた影響はあった」と述べた。根拠については「いろんな人と話したり、インタビューしたりということで、サイエンス(科学)として論文を書くようなことになっていないが、(影響が)あったというのが普通のわれわれの判断だ」と説明した。