話の肖像画

評論家・石平(59)(12)北京大学で没頭した民主化運動

《当時の大学はすべて国立で学費も寄宿費もタダ。2段ベッドが4つの8人部屋には、共有の机があるだけだった》


80年代は、文革が終わって「民主化運動」の嵐が吹き荒れた時期。北京大学は民主化運動の拠点のひとつでした。一応、夜9時が消灯時間なのですが、そんな時間に寝られるわけがありません。同室の学生が集まって、すぐに熱い議論が始まる。もちろん話題は「政治」です。月に1度くらいは、皆でカネを出し合い安い酒を買ってきてそれを飲みながら…。

首都北京出身の学生らが、堂々と「毛沢東批判」をブチ上げていたことは述べました。僕の〝洗脳〟がようやく解けたのは1年くらい後だったでしょうか。学生たちの間では文革期の過酷な体験を文学などの形で回顧する「手抄本」と呼ばれる小冊子が流布して広く読まれていました。

そこには、親の世代や自分たちが経験した阿鼻(あび)叫喚の地獄の様子が生々しく書かれている。読んでいるうちに僕もウソだとは到底思えなくなったのです。

僕らは、連日のように討論会や学習会を開き、民主化運動に没頭することになります。他の大学の学生や若い教員も加わりました。ただし、共産党を打倒するのではなく「共産党を民主化する」のが目的。これからの中国はよくなる。それを自分たち学生の手によって実現させる、という意気込みに燃えていたのです。(聞き手 喜多由浩)

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