次期衆院選で、大阪15区をめぐる情勢が風雲急を告げている。自民党現職の竹本直一(なおかず)前IT・科学技術担当相(80)の引退説が浮上し、地元の大阪府河内長野市選出の西野修平府議(48)が10日、竹本氏引退を前提に自民の公認候補を目指すと表明した。竹本氏は表向き、出馬の構えを崩してはいないが、娘婿で元国土交通省官僚の加納陽之助氏(41)が禅譲を狙っている。
「新型コロナウイルス対策で国と地方のギャップを感じた。府議会の経験と地域の声を国政に届けたい」
10日、府庁で記者会見した西野氏はこう語った。ただ、竹本氏が立候補すれば出馬は「百パーセントない」と否定。会見した理由については加納氏を引き合いに、「身内の方が活動を始めている。竹本氏が勇退する可能性があり、準備したい」と牽制(けんせい)した。
竹本氏引退説がささやかれる契機となったのは、地元の複数の自民支部が7月初めに下した決議だ。ある支部は高齢の竹本氏が昨年末に新型コロナに感染し、一時重症になったことを理由に「世代交代すべきだ」と勇退を求め、加納氏の出馬を要請した。
決議に拘束力はないが、竹本氏は数年前から加納氏を連れてあいさつ回りをしている。地元の地方議員は「次の選挙は加納氏でいくと捉えている人は多い」と話す。竹本氏は今月に入り、所属する岸田派の幹部に「万が一出馬できなかったときは、義理の息子を頼む」と伝達しており、引退説は現実味を帯びている。
地元では竹本氏が加納氏に禅譲するため、衆院選直前まで引退を表明しないことで、候補者選考にかけられる時間を短くする戦略ではないか、との見方もある。竹本氏を支援する地方議員は「令和の時代に義理の息子に禅譲するなど時代錯誤もはなはだしい」と批判。一方、加納氏側近は「ぎりぎりまで引っ張っても加納の名前が浸透せず、メリットはない」と、〝できレース〟を否定した。
竹本氏が引退を表明すれば自民府連は公募で後継を選考し、党本部に公認申請する。過去に自民を離党した西野氏は党籍回復の手続き中で、公認を得られるかは見通せない。西野氏の条件付き出馬表明を受け、加納氏は「期待に応えるため、粛々と活動を頑張りたい」と述べるにとどめた。
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大阪15区には日本維新の会の現職、浦野靖人(やすと)氏(48)と共産党の新人、為仁史(ため・きみひと)氏(72)が立候補する予定。