Dr.國井のSDGs考 ~置き去りにしない社会を目指して⑧

「安全至上主義が安全を脅かす」 前厚労省医務技監・鈴木康裕さん㊦

医師の國井修氏
医師の國井修氏

國井 サージキャパシティ(緊急時に必要なリソース、特に人材の確保)も大事ですよね。厚労省は人数も少ないし、やらないといけないことがたくさんある。有事の際にどこからどうやって人材を集めるか。対応能力を広げるか。保健所も同様です。

鈴木 今回、マスクが一時期足りなくなったとき、経済産業省には相当助けていただきました。厚労省は医療品の担当はしていますが、物流や輸出入には強くないですから、関係各省庁から応援にきていただけると助かります。地方自治体との関係において、総務省の協力を得られたのも大きかったです。

私は防衛省に出向していたことがありますが、自衛隊には自衛官を辞めた人のうち、希望者には一定額を支払って研修も受けてもらい、何かあったら自衛官に呼び戻す予備自衛官制度があります。医療でも、220万人いる看護師のうち70万人は、看護業についていない潜在看護師です。その中には、働きたくても夜勤はできない、午前中だけなら可能など、労働条件に制限がある人がいる。ワクチン接種や保健所の補助には、そうした人の助けが必要です。それにより看護師が外来に出られ、外来の看護師が入院を担当し、入院担当の看護師がICUに行けるようになります。

國井 最後の質問です。鈴木さんは定年退職とはいえ、まだお若い。今後、やりたいことはありますか?

鈴木 仕事の面では2つのことをしたいと思っています。まずは国際保健分野の人づくりです。軍事的オプションのない日本にとって、国際保健は大きな外交的ツールになり得ます。

もうひとつは、アジアで日本製の医薬品、医療機器の浸透を図ることです。医薬品や医療機器の世界市場をみると、日本や欧州はほとんど伸びていない。伸びているのは中国と北米とASEANなどのアジア。中国は国内企業が取っていくでしょうし、北米は競争が激しい。狙い目はアジアです。アジアは審査の基準もバラバラで、国によっては腐敗もありますが、経済成長は非常に速い。

私が今いる国際医療福祉大学は4年前に医学部を作り、140人の学生のうち20人が授業料不要で滞在費も大学側が負担する特待奨学生です。現5年生の成績を見ると、トップ5人のうち4人がアジアから来た特待奨学生です。こうした利点を生かし、アジアでの国際保健や日本製の医薬品、医療機器の浸透を支援できればと思います。それが36年間お世話になった厚労省への恩返しにもなるかなと思います。

プライベートでは、大学時代からやっているヨットの時間を充実させていきたいなと思っています。

國井 今日はどうもありがとうございました。とても楽しかったです。(構成・道丸摩耶)